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移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断

2008年9月5日
高見昭良

1.GVHDの分類

分類 亜分類 発症時期※ 急性GVHD症状 慢性GVHD症状
急性GVHD 古典的 100日以内 あり なし
持続型、再燃型、遅発型 100日以降 あり なし
慢性GVHD 古典的 規定なし なし あり
重複型 規定なし あり あり

※移植あるいはドナーリンパ球輸注からの日数



2.急性GVHD臓器障害のステージ

Stage(a) 皮膚 消化管
皮疹(%) (b) 総ビリルビン(mg/dL) 下痢(c)
1 <25 2.0-3.0 500-1,000 mLまたは持続する嘔気(d)
2 25-50 3.1-6.0 1,001-1,500 mL
3 >50 6.1-15.0 >1,500 mL
4 全身紅皮症、水疱形成 >15.0 高度の腹痛・出血(e)

(a)ビリルビン上昇、下痢、皮疹をひきおこす他の疾患が合併すると考えられる場合はstageを1つ落とす。合併症が複数存在する場合や急性GVHDの関与が低いと考えられる場合、主治医判断でstageを2-3落としても良い。
(b)火傷における「9の法則」を適応。
(c)3日間の平均下痢量。
(d)胃・十二指腸の組織学的証明が必要。(e) 消化管GVHDのstage 4は、3日間平均下痢量>1,500 mLかつ、腹痛または出血(visible blood)を伴う場合を指す。腸閉塞の有無は問わない。



3.急性GVHDの重症度分類(グレード)

Grade 皮膚stage 肝stage 消化管stage
0 0 0 0
I 1-2 0 0
II 3 1 1
III - 2-3 2-4
IV 4 4 -

「ECOG performance status (PS) 」= 4の場合、臓器障害がstage 4に達しなくともgrade IVとする。
各臓器障害のstageのうち、1つでも満たしていればそのgradeを適用する。
「-」は障害の程度が何であれgradeには関与しない。



4.慢性GVHDの診断 1)

4.1 「慢性GVHDの臨床徴候」上diagnostic signかdistinctive signが1つ以上存在し、GVHD類似の他疾患が否定されることにより診断される。Distinctive signは施設で施行の病理診断による確認が望ましいが、臨床的診断も可。これら以外の慢性GVHD所見(ネフローゼ症候群など)を認める場合は、参考所見として記録。


5.慢性GVHDの臨床徴候

臓器

Diagnostic sign

Distinctive sign

皮膚

多形皮膚萎縮
扁平苔癬様皮疹
強皮症様硬化性皮疹
限局性強皮症様皮疹
硬化性萎縮性苔癬

色素脱失

 

爪形成異常、萎縮、変形
爪床剥離、翼状片、対称性爪喪失

頭皮、体毛

 

脱毛(瘢痕性、非瘢痕性)
鱗屑、丘疹様角化病変

口腔

扁平苔癬様変化、板状角化症
硬化性病変による開口制限

口腔乾燥症、粘膜萎縮
粘液嚢胞、偽膜形成、潰瘍形成

眼球

 

眼球乾燥症、疼痛
乾燥性角結膜炎
融合性の点状角膜障害

生殖器

扁平苔癬様、膣瘢痕形成・狭窄

びらん、潰瘍、亀裂

消化器

食道ウェブ
上部食道の狭窄

 

生検で診断されたbronchiolitis obliterans

肺機能検査や画像で診断されたbronchiolitis obliterans

筋、関節

筋膜炎
関節拘縮

筋炎、多発筋炎



6.慢性GVHDの臓器スコア 2)

 

スコア0

スコア1

スコア2

スコア3

PS

ECOG 0

ECOG 1

ECOG 2

ECOG 3-4

皮膚

無症状

体表面積1-18%かつ硬化病変なし

体表面積19-50%、または浅在性(=つまめる)硬化病変

体表面積51-100%、または深在性(=つまめない)硬化病変、または皮膚病変のため動けない、または潰瘍、または高度の掻痒感

口腔

無症状

軽症、経口摂取の障害無し

中等症、経口摂取が軽度障害

高度障害、経口摂取が高度障害

無症状

軽度ドライアイ(点眼は1日3回以内にとどまる)、または無症状の角結膜炎

中等度ドライアイ(点眼は1日4回以上必要だが視力障害なし)

重症ドライアイ(痛み軽減のため保護眼鏡が必要)、または眼症状のため働けない、または角結膜炎による視力障害

消化管

無症状

消化器症状(嚥下困難、食欲低下、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢)あり、ただし体重減少は5%未満

消化器症状による体重減少5-15%

消化器症状により15%を超える体重減少、または食道拡張あり

T.Bil/ALP/AST/ALTがいずれも正常範囲

T.Bil/ALP/AST/ALTの1つでも正常上限の2倍未満に上昇

T.Bil>3mg/dL、またはT. Bil/ALP/AST/ALTの1つでも正常上限の2-5倍に上昇

T.Bil/ALP/AST/ALTの1つでも正常上限の5倍を超える

無症状、または%FEV1=80%以上

1階階段を登っただけで息切れ、または%FEV1=60-79%

平地歩行時息切れ、または%FEV1=40-59%

安静時息切れ・酸素吸引必要、または
%FEV1=40%未満

関節・筋膜

無症状

軽度の拘縮・可動制限があるが、日常生は支障ない

中等度の拘縮・可動制限、筋膜炎による紅斑があり、日常生活が中等度に制限

高度の拘縮・可動制限があり、日常生活が著しく制限(靴紐結び・ボタンかけ・着衣などができない)

性器

無症状

診察時に軽度の異常と不快感、性交時痛なし

診察時に中等度の異常と不快感、中等度の性交時痛

診察時に高度の異常と不快感、高度の性交時痛



7.慢性GVHDの重症度分類

軽症(mild)

スコア1が2臓器以内。ただし肺スコア=0

中等症(moderate)

スコア2が1臓器以上、またはスコア1が3臓器以上、または肺スコア=1

重症(severe)

肺=スコア2、またはスコア3が1臓器以上



8.慢性GVHD重症度分類のフローチャート




9.慢性GVHDの発症様式

9.1 先行する急性GVHDとの関連から、以下の3型に分類する。Progressive型の予後が最も悪い。3)
9.1.1 Progressive型:活動性急性GVHDから移行した慢性GVHD
9.1.2 Quiescent型:急性GVHDが軽快したのち発症した慢性GVHD
9.1.3 De novo型:急性GVHDが先行せず発症した慢性GVHD


10.ECOG performance status

Grade

Performance Status

0

全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。

1

肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事、事務作業

2

歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。

3

限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。

4

全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

この基準は全身状態の指標であり、局所状態で活動性が制限されている場合は臨床的に判断する。



11.文献

1) 日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会GVHDガイドライン部会, (2008).
2) Filipovich, A. H. et al., Biol Blood Marrow Transplant 11 (12), 945 (2005).
3) Akpek, G. et al., Blood 97 (5), 1219 (2001).

 

造血幹細胞移植前処置としてのATG(金沢大学第三内科ブログ)

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