金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年09月25日

【金沢大学統合卒業試験過去問題】兼:医師国家試験・専門医試験対策

金沢大学統合卒業試験過去問題(2007年)


(設 問)
36歳女性。全身皮膚の点状出血のため来院した。
現病歴:1週間前から感冒様症状、食欲低下が出現するようになり、近医にて抗生剤を含む投薬を受けた。3日前から四肢、胸腹部などに、点状出血がみられるようになった。本朝から鼻出血が出現し、止血しないため来院。
既往歴:特記すべきことなし。
現 症:意識は清明。身長158cm、体重56kg。体温36.4℃。脈拍88/分、整。血圧122/82 mmHg。鼻出血、歯肉出血あり。四肢、胸腹部に点状出血が多数みられる。心音、呼吸音異常なし。腹部は平坦で、肝、脾、腎を触知しない。下肢に浮腫を認めない。
検査所見:赤血球340万、Hb 10.5g/dl、白血球6,700、血小板1.2万、PT 18.4秒(基準10〜14)、APTT 39.6秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン320 mg/dl(基準200〜400)、FDP 7μg/ml(基準10以下)、ALT 28単位、LDH 284単位(基準176〜353)、クレアチニン 0.6 mg/dl 、CRP 0.1 mg/dl(基準0.3以下)。ハプトグロビン正常。PIVKA II陽性。
本症例の治療として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
予測正答率 85%

(    )a 血漿交換
(    )b ビタミンK点滴静注
( )c ピロリ菌の除菌療法
( )d 免疫グロブリン製剤投与
( )e 副腎皮質ステロイド薬投与



(ポイント)
1)本症例は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が疑われる。
2)また、PT延長、PIVKA II陽性よりビタミンK欠乏症を合併しているものと考えられる。
3)ハプトグロビン正常、LDH正常より溶血の所見はなく、特発性血小板減少性紫斑病(TTP)は考えられない。血漿交換はTTPの治療である。
4)ビタミンK点滴静注は、合併しているビタミンK欠乏症の治療として適している。
5)c、d、eは、いずれもITPの治療として適している。なお、選択肢cであるが、ITPに対する除菌療法は急性期ITPに対する治療としてではなく、慢性期ITPに対する治療として行われることが多いことをふまえて、直前に他の選択肢に差し替えました(何に差し替えたかは記憶していません、すいません)。ただし実際の臨床の場では、急性期ITPであっても、除菌療法が行われることは少なくないです。


(内科専門医試験対策)
ITP治療の第一選択と言えば、一昔前は、ステロイド療法、第二選択は摘脾術でした。しかし、現在は、その考え方に変化が見られてきています。
ピロリ菌陽性の患者様では、除菌療法をまず考えます。わずか1週間の除菌治療で、しかも副作用はほとんどありません。ステロイドは長期間服用が必要で、多くの副作用がみられるのとは対照的です。
除菌に成功しますと、約半数の患者様で血小板数の回復が見られますので、ステロイドによる治療効果と遜色ありません。ITPに対する除菌療法は素晴らしい治療法です。


(血液専門医試験対策)

1)妊娠時のITP管理は問われやすいものと推測される。臨床的にも問題となりやすい。
2)ITPの(20〜)40%に抗リン脂質抗体が出現することを理解しておく必要がある。ITPに対して摘脾術を行うと血小板数回復に伴って、血栓症を誘発することがある。
3)そのため、ITP症例では、必ずループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体をチェックしておく必要がある。

(答)a

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 10:17| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)

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