金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年10月30日

先天性凝固異常症(9)第XIII因子欠乏/異常症

先天性凝固異常症(8)第XII因子欠乏/異常症より続く。


先天性凝固異常症(9)
第XIII因子欠乏/異常症

第XIII因子欠乏/異常症

発症頻度は200万に1人と推定されており、現在までに200例以上の報告がみられます。

FXIIIはトランスグルタミナーゼ本体であるAサブユニット(FXIII A)と、その保護に働くBサブユニット(FXIII B)のそれぞれ2つずつからなるヘテロ4量体として血中を循環しています。

欠乏症には、FXIII A遺伝子変異に起因するFXIII A欠乏症と、FXIII B遺伝子変異により二次的FXIII A低下をきたすFXIII B欠乏症とがあります。


症状

特徴的な出血症状は、臍出血と頭蓋内出血です。

その他の出血症状としては、皮下出血、血腫などがしばしば認められ、一時的に止血しても翌日に再出血する“遷延性出血(後出血)”も特徴的です。

また、習慣性流産や創傷治癒遅延も認められます。


検査所見  

通常の凝血学的スクリーニング検査であるPT、APTTは正常ですので、本症を疑うときはFXIII活性や抗原量の測定が必要です。

活性測定は合成基質法、モノダンシルカダベリン法、抗原量測定はラテックス凝集法、ELISA法を用いて行います。

Aサブユニットが正常の5%以下、Bサブユニットが約半分であればFXIII A欠乏、両サブユニット共に5%以下であればFXIII B欠乏を疑います。


治療

補充療法には、血漿由来FXIII濃縮製剤が用いられます。

FXIIIの生体内回収率は100%、半減期は10日と長いため、消費機転が働かない場合は輸注されたFXIIIは長時間維持されます。

通常、FXIIIの止血レベルは2〜5%で、1回の輸注によって止血が得られます。

小出血ではFXIIIレベルを10%に、筋肉内出血では20-30%に保ちます。

しかしながら、頭蓋内出血などの重篤な出血や大手術時には創部でのFXIIIの消費が大きいため、100%以上にすることが望ましく、小手術時では50%以上を目安とします。

また、妊娠の維持にはFXIIIは必須であり10%以上を保つように、妊娠5〜6週頃よりFXIII濃縮製剤の定期補充(1-2V/週)を行います。

近年は重篤な出血の既往がある患者の出血予防を目的として、4週間隔で定期的予防投与が試みられています。

(続く)先天性凝固異常症(10)まとめ



<リンク>:臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患