金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2017年7月21日

平成29年度 血液内科学系統講義試験

平成29年度 血液内科学系統講義試験

平成29年7月12日 水曜日 試験時間 16時00分〜17時00分 (60分間)

問1.    スライドの細胞は何か?細胞名を記入せよ。


1)(好酸球   )
2)(分節核好中球)
3)(単球    )
4)(リンパ球  )
5)(赤芽球   )


問2.    次の文の括弧の中に適切な言葉を記入せよ。

1)造血幹細胞由来の一つのコロニーを構成する細胞は(      )クローン性である。
2)網赤血球数は通常(     )(単位)で表記する。
3)慢性炎症に伴う貧血ではインターロイキン6濃度上昇のため、肝からの(      )産生が亢進する。
4)古くなった赤血球は脾臓、肝などの(     )系組織で破壊される。
5)塗抹標本を作製する際には、細胞が縮まないように塗抹後の標本をただちに(    )させることが重要である。
6)(       )の低下は溶血を示唆する最も感度の高い検査所見である。
7)貧血の急速な進行に加えて血清総(     )が低下していれば出血を疑う。
8)貧血症状で頻度が高いのは(      )、動悸、易疲労感などである。
9)急性骨髄性白血病の芽球ではアズール顆粒が凝集した(     )が時にみられる。
10)外科的処置を行う際には、血小板数が(      )万/μL以上あることが必要である。



問3.   
21歳のタイ人留学生が検診で貧血を指摘されて来院した。血液検査では赤血球数290万/μl、ヘモグロビン6.0 g/dl、ヘマトクリット23%、血清鉄 82 μg/dl、TIBC 179 μg/dl、フェリチン 423 μg/dl、HbF 18%であった。

1)MCV値を冪数表示の単位をつけて記載せよ。 

2)父も慢性貧血を指摘されている。もっとも疑われる疾患は何か?  



問4.    貧血について正しい結びつきはどれか。

(1)    悪性貧血 − LDHの上昇 − 蛋白同化ステロイド
(2)    赤芽球癆 − 網赤血球の著減 − 副腎皮質ステロイド
(3)    再生不良性貧血 − 骨髄の脂肪化 − 同種造血幹細胞移植
(4)    発作性夜間ヘモグロビン尿症 − PIGA遺伝子変異 − 抗C5抗体
(5)    自己免疫性溶血性貧血 − 抗赤血球型抗体 − 血漿交換

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問5.    鉄欠乏性貧血に関する記載のうち正しいのはどれか。

(1)    原因を明らかにすることがもっとも重要である。
(2)    異食症や嚥下困難はしばしばみられる症状である。
(3)    生理出血のみで発症することは稀である。
(4)    食事療法によって改善させることは困難である。
(5)    中等度の鉄欠乏では爪が平坦化する。

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問6.    骨髄異形成症候群に関する記載のうち正しいのはどれか。


(1)    p53遺伝子変異陽性例の予後は不良である。
(2)    2系統以上の血球に減少があることが診断の必要条件である。
(3)    全体の約50%が白血病に移行する。
(4)    骨髄細胞の形態異常によって診断される。
(5)    死因の多くは感染や出血によるものである。

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問7.    溶血性貧血に関する記載の中で正しいのはどれか。


(1)    LDHの上昇は主に分画II、IIIによるものである。
(2)    網状赤血球は通常は10万/μL以上に増加する。
(3)    遺伝性球状赤血球症ではMCHCが高い。
(4)    PNH患者では血小板上のGPIアンカー膜蛋白も欠損している。
(5)    自己免疫性溶血性貧血ではクームス試験が例外なく陽性となる。

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問8.    EBウイルスが関与するリンパ系腫瘍はどれか。


(1)    ホジキンリンパ腫
(2)    節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型
(3)    慢性リンパ性白血病
(4)    成人T細胞性白血病/リンパ腫
(5)    免疫不全関連リンパ増殖性疾患

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問9.    ホジキンリンパ腫に関する記載の中で正しいのはどれか。


(1)    日本では悪性リンパ腫の中の10%程度である。
(2)    病変は非連続性に進展する。
(3)    CD20を標的としたリツキシマブが難治例に対して有効である。
(4)    発熱や炎症反応を伴うことが多い。
(5)    若年者では結節硬化型(nodular sclerosis; NS)が多い。

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問10.    治療法で正しい結びつきはどれか。


(1)    多発性骨髄腫 — ボルテゾミブ
(2)    慢性リンパ性白血病 — アレムツズマブ(抗CD52抗体)
(3)    成人T細胞性白血病/リンパ腫 — モガムリズマブ(抗CCR4抗体)
(4)    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 — イブリチニブ(BTK阻害薬)
(5)    濾胞性リンパ腫 — イマチニブ

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問11.    次の文章の中で正しいものはどれか。

(1)    B細胞性リンパ腫の中でもっとも多いのはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
(2)    ヘリコバクタ・ピロリ陽性の胃辺緑帯B細胞リンパ腫に対する第一選択の治療法は放射線治療である。
(3)    NK/T細胞性リンパ腫に対して抗CD20抗体が有効である。
(4)    血管内大細胞型B細胞性リンパ腫は不明熱の重要な鑑別疾患である。
(5)    ALK陽性未分化大細胞リンパ腫の予後はALK陰性のものよりも良好である。

a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)



問12.    下記患者のアグレッシブリンパ腫瘍の国際予後指標(Internal Prognostic Index: IPI)(1項目1点)を求めよ。

63歳男性。頚部リンパ節の生検で、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。FDG-PET/CTでは両側頚部・左腋窩・縦隔リンパ節にそれぞれ2〜3センチ大のリンパ節を認めたが、その他の部位に病変は認めなかった。入院前日まで仕事を普通にこなしていた。体重減少や寝汗は認めていない。骨髄生検では骨髄浸潤の所見はみられなかった。LDHは167 IU/l(基準176〜353)、可溶性IL-2レセプター 1240 IU/ml(基準127〜582)であった。

国際予後指数(  )点



問13.    骨髄腫について誤っているものはどれか。


(1)    G-bandingによる染色体検査では染色体異常の検出率が高い。
(2)    骨病変対策として用いるビスフォスフォネート製剤の重大な副作用は顎骨壊死である。
(3)    重篤な合併症がなく心肺機能が正常な65歳以下の症例は、自家末梢血幹細胞移植の適応である。
(4)    血清アルブミン値と血清β2ミクログロブリン値を組み合わせることによって予後予測が可能である。
(5)    17p-を有する例は予後良好である。

a. (1)(2)  b. (2)(3)  c. (3)(4)  d. (4)(5)  e. (1)(5)



問14.    多発性骨髄種を診断する骨髄腫診断事象(MDE: myeloma defining event)の臓器障害に含まれないのはどれか。1つ選べ。


a.    高カルシウム血症
b.    腎不全
c.    貧血
d.    骨病変
e.    アミロイドーシス



問15.    ミエロペルオキシダーゼ (MPO) 染色、特異的エステラーゼ染色、非特異的エステラーゼ染色いずれもが陽性であった場合に考えられる疾患はどれか。1つ選べ。


a.    最未分化型急性骨髄性白血病
b.    急性骨髄単球性白血病
c.    急性単球性白血病
d.    赤白血病
e.    急性巨核芽球性白血病



問16.    フローサイトメトリーによる表面マーカー解析が診断に有用でない疾患はどれか。1つ選べ。


a.    骨髄異形成症候群
b.    急性リンパ性白血病
c.    慢性骨髄性白血病(慢性期)
d.    慢性リンパ性白血病
e.    多発性骨髄腫



問17.    急性白血病に関する記述で正しいのはどれか。


(1)    成人では骨髄性よりリンパ性の方が多い。
(2)    WHO分類では芽球比率が30%以上で急性白血病と診断する。
(3)    FLT3遺伝子変異を伴うと予後良好である。
(4)    Core binding factor (CBF) 白血病に対して大量シタラビン(Ara-C)療法が有用である。
(5)    一部の病型はDown症候群に合併しやすいことが知られている。

a. (1)(2)  b. (2)(3)  c. (3)(4)  d. (4)(5)  e. (1)(5)



問18.    疾患名とその疾患に特徴的な染色体異常、遺伝子異常の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。

a.    本態性血小板血症 − CALR遺伝子変異
b.    慢性骨髄単球性白血病 − t(8;21)
c.    真性多血症/真性赤血球増加症 − JAK2遺伝子のV617変異
d.    分化型急性骨髄性白血病 (M2) − t(15;17)
e.    好酸球増多を伴う急性骨髄単球性白血病 − inv(16)




問19.    疾患名と検査所見の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。


a.    急性単球性白血病 — 尿中リゾチーム高値
b.    慢性骨髄性白血病 — 末梢血中の幼若顆粒球
c.    真性多血症/真性赤血球増加症 — エリスロポエチン高値
d.    骨髄線維症 — 涙滴赤血球
e.    急性前骨髄球性白血病 — Auer小体



問20.    疾患名と症状・身体所見の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。


a.    真性多血症/真性赤血球増加症 − 血栓症
b.    原発性骨髄線維症 − 巨脾
c.    本態性血小板血症 − 無症状のことが多い(健診等で偶然指摘)
d.    慢性骨髄性白血病 − 歯肉腫脹
e.    急性前骨髄球性白血病 (M3)  − 出血傾向



問21.    慢性骨髄性白血病の治療に通常用いない薬剤はどれか。


(1)    イマチニブ
(2)    アナグレリド
(3)    ルキソニチニブ
(4)    ダサチニブ
(5)    ニロチニブ

a. (1)(2)  b. (2)(3)  c. (3)(4)  d. (4)(5)  e. (1)(5)







(正答)
記述式の回答は、同義語であれば正解とします。

問2.    次の文の括弧の中に適切な言葉を記入せよ。

1)造血幹細胞由来の一つのコロニーを構成する細胞は(   単   )クローン性である。
2)網赤血球数は通常(   /μL  )(単位)で表記する。
3)慢性炎症に伴う貧血ではインターロイキン6濃度上昇のため、肝からの( ヘプシジン )産生が亢進する。
4)古くなった赤血球は脾臓、肝などの(   網内  )系組織で破壊される。
5)塗抹標本を作製する際には、細胞が縮まないように塗抹後の標本をただちに(  乾燥   )させることが重要である。
6)(ハプトグロビン)の低下は溶血を示唆する最も感度の高い検査所見である。
7)貧血の急速な進行に加えて血清総(   蛋白  )が低下していれば出血を疑う。
8)貧血症状で頻度が高いのは(  息切れ  )、動悸、易疲労感などである。
9)急性骨髄性白血病の芽球ではアズール顆粒が凝集した(アウエル小体 )が時にみられる。
10)外科的処置を行う際には、血小板数が(   5   )万/μL以上あることが必要である。

問3
1)79.3 x 10-15 L
2)サラセミア

問4 d

問5 c

問6 c

問7 d

問8 b

問9 c

問10 a

問11 c

問12 1点

問13 e

問14 e

問15 b

問16 c

問17 d

問18  b, dいずれかを選択した場合に正答とします

問19 c

問20 d

問21 b






 <リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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