金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年11月12日

悪性リンパ腫(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫):標本2

BSL標本カンファレンス

 

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悪性リンパ腫:1

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悪性リンパ腫:3

 

2008年9月30日(火)「ホジキン病関連」その2


症例2 60台男性

現病歴 8年前前立腺がんの既往があり、金沢大学血液内科受診3ヶ月前に撮影されたfollow upのCTで全身リンパ節腫脹、脾腫を指摘。B症状(発熱)あり。
身体所見 発熱を認め、右後頸部リンパ節を触知
主要な検査 LDH 218と軽度上昇、血小板減少、sIL-2R 2610、PETにて全身リンパ節と骨に異常集積を認めた


右外腸骨動脈周囲リンパ節生検標本
◆H-E染色

標本2-1

ろ胞構造が消失している。弱拡では症例1と比べるとピンクの部分が多いように見え、強拡で大型の核小体がはっきりした細胞(ホジキン様)や中型〜大型の異型リンパ球が増加していることが確認できる。

 


◆CD30:ホジキン様の細胞の多くが陽性

標本2-2

 

 

◆CD15:CD30と同様にホジキン様の細胞が陽性
◆CD20、79α:ホジキン様の細胞の一部と、中型から大型の異型リンパ球の多くが陽性

 

◆EBER:大型ホジキン様細胞の一部が陽性
標本2-3



図はEBERのスライド強拡大

 

 

◆CD3:陰性

骨髄生検:リンパ腫細胞の浸潤が認められる

 

診断 
本症例では腫瘍細胞と考えられる大型の細胞がCD30、15、20、79αに陽性であった。

腫瘍細胞のほとんどがCD20陽性であったことや79α陽性であったこと、リンパ節腫脹部位が全身であることや、骨浸潤があることはホジキン病ではなく非ホジキンリンパ腫の特徴であり、B細胞性非ホジキンリンパ腫と診断された。

しかしCD15が陽性であったことなど、病理標本からは症例1のようなホジキン病との鑑別は非常に難しく、専門家の間でも意見が分かれホジキン病からの移行期の症例とも考えられた。

B細胞性非ホジキンリンパ腫(臨床病期 IVB(骨浸潤)、international prognostic index; IPIはhigh)
サブタイプ:Age related EBV-associated B-cell lymphoproliferative disorders (senile lymphoma)

 

Q&A
・Age related EBV-associated B-cell lymphoproliferative disorders(senile lymphoma)の予後は?

年齢、B症状(発熱、盗汗、体重減少)の有無 で予後が決まる
2つ陽性なら平均生存期間 9ヶ月
1つ陽性なら25ヶ月
0個なら56ヶ月

治療にリツキシマブを加えるかどうかで予後が改善するかどうかはまだ検討中である。

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:39| 血液内科(標本) | コメント(0) | トラックバック(0)

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