金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年07月05日

DICに対するトランサミン投与と肝腎障害(図解49)

腎糸球体フィブリン沈着:DICモデルとトランサミン(図解48)から続く。

 

 

DIC49

 

組織因子(tissue factor:TF)誘発DICモデルおよびLPS誘発DICモデルに対しまして、トラネキサム酸(商品名トランサミン)を投与した結果についての記事を続けたいと思います。

上記の2種類のラットDICモデルに対しまして、トランサミンを投与しますと、血尿は軽減し(DICモデル血尿と抗線溶療法:トランサミン(図解46))、血中Dダイマーは低下します(DICモデル:Dダイマーとトランサミン(図解47))。この結果だけをみますとDICモデルに対してトランサミンは良いことをしているような錯覚に陥ってしまいます。

しかし、前回の記事で書かせていただいたように、腎糸球体フィブリン沈着は高度になってしまいました(腎糸球体フィブリン沈着:DICモデルとトランサミン(図解48))。



さて、腎障害のマーカーとしてのクレアチニン(Cr)、肝障害のマーカーとしてのALT(GOT)はどのように変動するでしょうか。

(参考)DICモデルの比較
16.   DICモデルへ
17.   DICモデルの比較
18.   LPS誘発DICモデル  
19.  組織因子(TF)誘発DICモデル 
20.  臓器障害の比較 
21.  腎糸球体フィブリン沈着  
22.  出血症状(血尿) 
23.  病型分類(動物モデルとの対比) 
24.  病態の共通点と相違点


組織因子(TF)誘発DICモデルは、本来は腎障害も肝障害もほとんど見られないDICモデルです。しかし、トランサミンを投与しますと、LPS誘発DICモデルに匹敵するような、肝・腎障害がみられるようになってしまいます。

一方、LPS誘発DICモデルは、元々臓器障害の高度なモデルです。そのLPS誘発DICモデルに対しましてトランサミンを投与しますと、肝・腎障害はさらに高度になってしまいます。

このように、どちらのDICモデルであっても、トランサミンは臓器障害を有意に悪化させました。血尿や、Dダイマーのみを見ていた場合には、トランサミンは良い作用を発揮すると誤認してしまうことになります。

DダイマーはDICの診断に不可欠なマーカーであることは間違いないのですが、Dダイマーのみを見ていた場合には落とし穴があることも知っているべきと思います。Dダイマーの弱点も知ることで、Dダイマーの強みを最大限活用できるのではないかと思っています。

  (続く)

DICに対するトランサミン投与と死亡率(図解50)

 


【DIC関連のリンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】(シリーズ進行中!!)

血液凝固検査入門(全40記事)

DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)

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【金沢大学第三内科関連のリンク】

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:53| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0)

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