金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年07月23日

DICモデルに対する線溶療法(ウロキナーゼ、t-PA)(図解51)

DICに対するトランサミン投与と死亡率(図解50)から続く。

DIC51
播種性血管内凝固症候群(DIC)モデルに対して、トラネキサム酸(商品名トランサミン)による抗線溶療法を行いますと、血尿は軽減し血中Dダイマーは低下するものの、臓器障害や腎糸球体フィブリン沈着は増悪し、死亡率も悪化することについて記事にしてまいりました。

しかし、抗線溶療法の検討のみでは充分とは言えません。反対側からの検討として線溶療法(ウロキナーゼ urokinase UKなど)による評価も行って念おしする必要があります。

血小板数が低下していて出血しやすいDICに対して線溶療法とは何事かと思われるかも知れませんが、実は既に臨床においてこれに近い検討がなされています。


髄膜炎球菌感染症(敗血症)の症例に対して、線溶療法治療薬である組織プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator:t-PA)を投与したというものです。

DICの基礎疾患によっては、血栓が残存しやすいことがあります。敗血症に合併した線溶抑制型DIC(DICの病型分類)がその代表です。これに対して、線溶療法により血栓を溶解しようという考え方は、ある意味、理にかなっているとも言えます。

このような発想をする臨床家はやはり存在するようで論文報告もされています。
下記の論文は、髄膜炎球菌による敗血症(DIC合併例の存在が想定される)に対して、t-PAによる線溶療法を行ったという報告です。

Zenz W, et al: Use of recombinant tissue plasminogen activator in children with meningococcal purpura fulminans: a retrospective study. Crit Care Med. 2004 Aug;32(8):1777-80.


上記の論文でも指摘されているように、このような症例に対する線溶療法は、出血(特に脳出血)の副作用の問題があり残念ながら現時点では行うことができません。

しかし、将来的には、より良い線溶療法治療薬の開発や、より良いモニタリングの開発などにより、敗血症に合併した DICに対する線溶療法の時代が来る可能性はありうる思っています。


さて、臨床応用の可否は別としまして、DICモデルに対してウロキナーゼなどによる線溶療法を行うというのは、DICにおける線溶活性化の意義を考察する上で、大変に意義があります。

どうなるのでしょうか?

  (続く)

 


【DIC関連のリンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】(シリーズ進行中!!)

血液凝固検査入門(全40記事)

DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:00| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(1)

◆この記事へのコメント:

はっきりいってDICについての知識がゼロで苦手意識満載でしたが,この講座の小気味よく丁寧でわかりやすい内容に出会って,一気に全部読み通した結果,血栓症が面白くてたまらなくなりました!!

投稿者:日鋼記念病院研修医: at 2009/08/18 01:43

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