金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年01月09日

遺伝子組換え第IX因子-アルブミン融合製剤の報告(血友病)

血友病症例において出血がみられた場合に、適切に補充療法を行うことにより関節症の進行を阻止することが可能と考えられています。

また、重症症例では、出血のエピソードとは無関係に、定期的な(2〜3回/週など)凝固因子製剤の予防投与が有効との報告も多々あります。

特に予防投与を考える場合には、投与間隔が長くなれば、患者さんに対する負担も少なくなり有用ではないかと考えられます。

このような観点から、近年、半減期の長い製剤の開発が行われています。
関連論文の紹介をさせていただきたいと思います。



「遺伝子組換え第IX因子-アルブミン融合製剤の薬物動態」


著者名:Metzner HJ, et al。
雑誌名:Thromb Haemost 102: 634-644, 2009.

<論文の要旨>

血友病Bは、血液凝固第IX因子が先天性に欠損する伴性劣性の遺伝性疾患です。

重症の血友病Bにおいては、第IX因子製剤の予防投与が2回/週程度行われていますが、もしも第IX因子の薬物動態に影響を与えることにより製剤の投与回数を減少させることができれば有用と考えられます。

この目的で、遺伝子組換え第IX因子-アルブミン融合蛋白(rIX-FPs)の開発が行われました。

各種の検討により、rIX-FPsは凝固活性を充分に発揮することが確認されました。また、ラットで血中半減期およびAUCを評価したところ、rIX-FPsはrFIXと比較して有意に好プロフィールを示しました。FIX欠損マウスによる検討でも同様に好成績を示しました。

FIX欠損マウスの尾切断を行うことによる出血時間は、本剤により有意に短縮しました。

以上、アルブミンとFIXを融合させたrIX-FPs製剤の開発は、大変魅力的な治療につながる可能性があるものと考えられました。






薬剤の血中半減期を伸ばすような開発は、投与回数を減らすことができるということで、大きなメリットがあると思います。

疾患・病態によっては、薬剤の半減期を伸ばすことがデメリットになることもあるかも知れませんが、血友病症例に対する凝固因子製剤の予防投与という点からは、半減期の延長は大きなメリットになると思います。

現時点では夢物語ですが、もしも半減期が1年もある凝固因子製剤があれば、1年に1回の投与で良くなるかもしれませんね。夢物語でなくなる日が、早く来て欲しいものです。

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:19| 出血性疾患