金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2013年01月09日

プロトロンビン複合体製剤:ワルファリンとダビガトラン中和

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


プロトロンビン複合体製剤はワルファリンによる凝固異常に伴う出血を減少させるがダビガトランに伴う出血には無効である

著者名:Lambourne MD, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 1830-1840, 2012.


<論文の要旨>

ワルファリンや新規経口抗凝固薬であるダビガトラン(DE)は血栓塞栓症を予防するが、出血の副作用の懸念があります。

しかし、これらの薬剤の中和と出血症状に関する臨床的な検討はほとんどありません(検査データで評価した報告はありますが)。

著者らは、マウスの尾切断法により、プロトロンビン複合体剤(PCC)、活性型PCC(APCC) 、遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)、マウス新鮮凍結血漿(FFP)の効果を評価しました。

CD1マウスがワルファリンまたはDEを投与され、凝固検査、出血量、出血時間を測定しました。


マウスにワルファリンを投与した凝固異常状態(PT比:4.3または24の2種類を作成)で、PCC(14.3IU/kg)は出血量および出血時間を正常化しましたが、rFVIIa(3mg/kg)やFFPは無効でした。

PCC単剤、rFVIIa単剤、PCC&rFVIIa併用、APCC(100U/kg)はいずれも、DE60mg/kgに伴う凝固異常の出血量を減少させませんでした。

PCC&rFVIIa併用、APCCはDE投与マウスの出血時間を短縮させました。


以上、PCCは、DEよりもワルファリン伴う凝固異常に伴う出血の方をはるかに有効に阻止すると考えられました。




 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17| 出血性疾患