金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年03月31日

VWD&血友病Aと遺伝子組み換えIL-11

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


デスモプレシンに反応しないVWDと軽症〜中等症血友病Aに対する遺伝子組み換えIL-11の効果

著者名:Ragni MV, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 109: 248-254, 2013.


<論文の要旨>

デスモプレシン(DDAVP)は、軽症von Willebrand病(VWD)に対しての治療選択肢になっていますが、20%の症例はDDAVPに反応しません。

反応のみられる80%の症例でも血管内皮貯蔵のvon Willebrand因子(VWF)が枯渇するために効果は一過性です。


著者らは、遺伝子組換えインターロイキン-11(rhIL-11、NeumegaR)の、DDAVPに不反応またはアレルギーを有するVWD、あるいは軽症〜中等症血友病A(HA)に対する安全性と有効性を検討するための単施設第II相臨床試験を行いました。

対象は9症例(VWD4例、HA5例;年齢中央値26才<22〜51才>)です。


VWDに対してrhIL-11を投与したところ、48時間後よりVWF:RCoの上昇がみられ始めて、4日間持続しました。

4日後におけるVWF:RCoは1.54倍(VWD1.30倍、HA1.73倍)でした。

同様に、FVIII:Cも48時間後より上昇がみられれ始めて、4日後におけるFVIII:Cは1.65倍(VWD1.86倍、HA1.48倍)でした。


rhIL-11投与に伴う有害事象としては、体液貯留、紅潮、結膜充血がみられました。

1例では3度の一過性低ナトリウム血症がみられましたが、糖尿病による高血糖のため過飲水したことが原因であり、水分制限により軽快しました。


以上、rhIL-11は、DDAVP不反応(またはアレルギー性)VWD4例中2例でVWF活性を上昇させ、軽症〜中等症血友病5例中4例のFVIII活性を上昇させたたため、臨床応用の可能性があると考えられました。




<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12| 出血性疾患