金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年06月12日

血友病:肝疾患の血小板数低下とトロンボポエチン受容体作動薬

論文紹介です。

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参考:ITPと抗リン脂質抗体症候群(APS)ロミプロスチム


「慢性肝疾患のために血小板減少をきたした血友病に対するトロンボポエチン受容体作動薬の投与」

著者名:Aguilar C.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis  24: 231-236, 2013.


<論文の要旨>

トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)であるエルトロンボパグやロシプロスチムは当初は不応性ITPに使用されてきましたが、最近はHCV関連の慢性肝疾患(CLD)に起因する血小板数低下にも応用されるようになってきました。

血友病患者の止血管理にもTPO-RAが応用できる可能性があります。

血友病患者に対する観血的処置の前や、抗ウイルス療法(インターフェロンなど)前または治療中に、血小板数を上昇させる目的にもTPO-RAを適用できるかも知れません。

あるいは、進行したCLDのために高度な血小板数低下がみられる症例においても、出血の頻度を減らす目的に有用でしょう。

ただし、CLDに対してTPO-RAを投与すると門脈血栓症など腹腔血管血栓症をきたしたという報告もあります(とくに血小板数が20万以上になったり、他の血栓症リスクを持った患者に観血的処置を行った場合)。

そのため血友病患者は血栓症になりにくいかも知れませんが、血小板数は5〜10万に維持されるよう用量調節すべきでしょう。

以上、TPO-RAはCLDのために血小板数低下をきたした血友病患者に対して治療選択肢の一つになると考えられました。

<リンク>
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17| 出血性疾患