金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年10月16日

アミロイドーシスと出血(4)第X因子低下&線溶活性化の症例

アミロイドーシスと出血(3)出血傾向の治療より続く。


<アミロイドーシスと出血>
(4)

症例  44歳男性。

【主訴】下肢の著明な浮腫と右膝関節内血腫。

【現病歴】

生来健康で、出血傾向を認めない。

下肢のむくみと右膝関節痛・腫脹を認めたため近医を受診し、ネフローゼ症候群および膝関節内血腫と診断された。

腎生検の結果、ALアミロイドーシスと診断された。

【検査所見】

尿検査:蛋白4+、潜血2+

血液検査:PT 28.3秒、APTT 54.7秒、へパプラスチンテスト 30%、フィブリノゲン 268 mg/dl、FDP 11.8μg/ml、D−ダイマー 2.8μg/ml、アンチトロンビン活性 106%、プラスミノゲン活性 29%、α2プラスミンインヒビター 41%

TAT 7.6μg/l、PIC 18.3μg/ml、FX活性 6%


【入院後経過】

経過

出血傾向に対して、抗プラスミン作用を有するトラネキサム酸投与を開始したところ、著明に亢進していた線溶活性は速やかに改善し(PIC 18.3→4.0μg/ml)、FX活性は徐々に改善して20%程度となり3週間後には出血傾向は消失しました。

ALアミロイドーシスの化学療法として、Auto-PBSCTを併用したメルファラン大量療法を施行したが根治には至らず、FX活性値は33%まで改善したが、最終的には発症11か月後に臓器不全にて永眠されました。

本症例の出血傾向は、FX活性低下に加えて線溶活性化の関与も大きいと考えられ、トラネキサム酸の投与だけで出血傾向が消失した点は注目すべきところでです。

(続く)アミロイドーシスと出血(5)病理


<リンク>:臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47| 出血性疾患