金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年10月27日

先天性凝固異常症(6)第X因子欠乏/異常症

先天性凝固異常症(5)第VII因子欠乏/異常症より続く。


先天性凝固異常症(6)
第X因子欠乏/異常症

第X因子欠乏/異常症

本症の発症頻度は100万人に1人で、FVII欠乏症と類似した出血傾向を示します。稀に、FXとFVII、FXとFVIIIあるいはFXとFXIIの遺伝性欠損症があります。


症状

 ホモ接合体あるいは複合へテロ接合体の患者は出血傾向を示しますが、その程度は活性の減少とよく相関します。

鼻出血、歯肉出血、過多月経、外傷や術後の過剰出血が多いですが、関節出血、頭蓋内出血など重篤な出血をきたす場合もあります。

活性が50%程度のヘテロ接合体ではほとんど出血を認めず、スクリーニング検査や家系内調査のときに偶然発見されることが多いです。


検査所見
 一般的には、明らかな家族歴があり、PT・APTTともに延長、FX活性が低下しており、後天性FX欠損を除外できる場合、先天性FX欠乏症を疑います。

FX活性は低値を示しますが測定可能であり、FXノックアウトマウスの結果が示すようにFXの完全欠損は致死的です。


治療
異常出血時の治療や術前の出血予防投与には、FX補充療法としてFIX複合体製劑の輸注を行います。

一般的に止血に十分なFXレベルは10〜20%と考えられていますが、補充療法は重症度に応じて行うべきであり、軟部組織・粘膜・関節内出血には30%以上、重篤な出血に対しては50-100%になるように補充します。

FXの半減期は40-60時間と比較的長いので、出血症状を考慮しながら1日1回の投与により維持します。


後天性第X因子欠乏症
全身性アミロイドL鎖(AL)アミロイドーシスの患者で、後天性FX欠乏症を合併することはよく知られています。

治療としては、アミロイドーシスの積極的な化学療法により、FXレベルが回復し出血傾向が改善する場合があります。

(続く)先天性凝固異常症(7)第XI因子欠乏/異常症


<リンク>:臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54| 出血性疾患