金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年05月20日

新しいDIC診断基準へ(5)FDP/D-ダイマー

新しいDIC診断基準へ(4)分子マーカー:TAT・SF・F1+2より続く

新しいDIC診断基準へ(5)FDP/D-ダイマー

DIC診断におけるFDPやD-ダイマーの意義は大きく、実際ほとんどのDIC診断基準において重要検査項目として採用されています。


ただし、FDPやD-ダイマーは、感度は高いですが特異度は低い点に注意が必要です。

例えば、深部静脈血栓症、肺塞栓、大量胸腹水、大皮下血腫などでもしばしば上昇します。


FDPとD-ダイマーは対象とする分子種が必ずしも一致しませんので、両者を測定する医学的意義があります。

例えば、高度な線溶活性化を伴うDICにおいてはフィブリンのみならずフィブリノゲンも分解するために、FDPは著明に上昇しますがD-ダイマーは中等度の上昇にとどまりFDPとD-ダイマーの間に乖離現象を生じます(D-ダイマー/FDP比が低下します)。

ただし、同時測定を行うと保険査定される地域がありますので、漫然とFDPとD-ダイマーの両者を測定するのは控えるべきでしょう。

FDPについてですが、線溶亢進型DICでは、FDPが著増するのに対してD-ダイマーが中等度上昇に留まるために、FDPとD-ダイマーの間に乖離現象をきたします。


急性期基準においてはFDPとD-ダイマーの換算表が作成されていますが、問題があります。

つまり、日本で使用されている全ての試薬が取り上げられていない、複数試薬を持っているメーカーもあるが配慮されていない、同じ母集団での換算表ではなく科学的でない、DIC症例での換算表でない、DIC症例であったとしても基礎疾患によっても換算式が変わってくる、などです。

FDPとD-ダイマーの換算表の作成は科学的には不可能と考えられます。


最近のFDPは、血清FDPから血漿FDPに切り替わってきていますが、血漿FDPは試薬間差が大きくなっています。

特に、線溶活性化が高度でフィブリン/フィブリノゲン分解が進行した場合には、血漿FDPでは検出しにくくなる試薬もあります。

D-ダイマーは、血漿FDPよりも更に試薬間差が大きくなります。

このような背景のもと、まずはD-ダイマーではなくFDPでDIC疑い症例の拾い上げをすべきではないかと考えられます。


DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」

 


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59| DIC