金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2015年03月15日

僧帽弁閉鎖不全と後天性von Willebrand症候群(VWS)

論文紹介です。

「僧帽弁閉鎖不全におけるずり応力関連の後天性VWD

著者名:Blackshear JL, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 1966-1974, 2014.

<論文の要旨>


僧帽弁閉鎖不全症(MR)は、後天性に止血異常をきたすことが知られています。

著者らはMR症例における後天性von Willebrand症候群(VWS)の頻度と重症度を検討しました。


心エコー検査でMRの確認された53症例について、出血に関するアンケート調査、凝血学的検査を行いました。

僧帽弁手術の行われた症例では術後に検査がくり返されました。


心エコー検査の結果、軽症MR13例、中等症MR14例、重症MR26例でした。

最高分子量のvon Willebrand因子(VWF)マルチマー欠損は、軽症、中等症、重症でそれぞれ8%、64%、85%にみられ、platelet function analyzer collagen APD clousure time (PFA-CADPs)の中央値はそれぞれ84秒、156秒、190秒であり、VWFの活性/抗原比はそれぞれ0.92、0.85、0.79でした。

9例では臨床的に有意な出血がみられ、7例では小腸の血管異形成と輸血依存性の胃腸出血(Heyde症候群)がみられました。

僧帽弁の修復のされた13例または置換術の行われた7例では、術後に上記のVWF機能検査は全て正常化しました。


以上、中等症〜重症MRにおける高ずり応力の病態は、高頻度にVWFの活性を低下させると考えられました。

この病態では後天性VWSを発症しますが、僧帽弁手術によって回復すると考えられました。


<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48| 出血性疾患