金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年05月16日

慢性DIC:ヘパリン皮下注、新規経口抗凝固薬(NOAC)

<慢性DICに対するヘパリン皮下注>

ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)


大動脈瘤、巨大血管腫、緩徐に進行する癌などで慢性DICを合併した場合に、DICの合併のために退院できない場合があります。

そのような場合に、ヘパリン在宅自己注射は優れた治療選択肢となります。

DICにおいては基質としての凝固因子を低下させてもDICの本態である凝固活性化を抑制することができませんが、活性型凝固因子(トロンビンや活性型第X因子など)を抑制して初めてコントロールが可能です。

実際、DICに対してワルファリン(基質としてのビタミンK依存性凝固因子を低下させる薬剤)を投与すると無効であるばかりでなく、大出血の合併症がみられることがあり、禁忌です。

また、劇症肝炎は凝固因子が枯渇する病態ですがやはりDICを発症します。


活性型凝固因子を阻止する薬剤としては、ヘパリン類が知られています。

在宅で治療する場合には通常ヘパリン5000単位を1日2回皮下注します。

ただし、低体重、腎障害合併例では減量して用います。


大動脈瘤、巨大血管腫では線溶亢進型DICを合併することが特徴的であり、臓器障害よりも出血症状が見られやすいです(ただし、動脈瘤などではDICではなく基礎疾患に起因する腎障害をきたすことがあります)。

ヘパリン在宅自己注射を導入する場合には、必ず入院の上、出血の副作用がみられないかチェックする必要があります。

なお、線溶亢進型DICの典型例ではヘパリンのみではなくトラネキサム酸(商品名:トランサミン)を併用した方が出血症状に対して有効な場合がありますが、トラネキサム酸は致命的な血栓症を誘発することもあるため、必ず専門家にコンサルトすべきです。

前述のように、DICに対してワルファリンは禁忌ですが、新規経口抗凝固薬(NOAC)はトロンビンまたは活性型第X因子を直接抑制するためにDICに対して有効である可能性があります

保険適応がないため現時点では使用できませんが、検討の価値があります。


朝倉英策. 新規経口抗凝固薬(NOAC). 朝倉英策・編. 臨床に直結する血栓止血学. 東京:中外医学社; 2013. pp.321-329.

Hayashi T, et al.: Rivaroxaban in a Patient with Disseminated Intravascular Coagulation Associated with an Aortic Aneurysm. Ann Intern Med, 15: 158-159, 2014.


ヘパリン在宅自己注射療法(インデックス)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| 抗凝固療法