金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年08月05日

血友病患者における癌発症頻度と生存率

論文紹介です。

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血友病患者1,054例における癌発症頻度と生存率」

著者名:Huang YC, et al.
雑誌名:Am J Hematol 90: E55-59, 2015.

<論文の要旨>

血友病患者(PWH)の平均余命が向上するに伴って、癌などの加齢と関連した疾患が問題となってきます。

著者らは、台湾におけるPWHの癌発症率と生存率を検討しました。


台湾の国民健康保険研究のデータベースから取得したPWH1,054例のデータ(1997〜2010年)を調査して、一般集団からの年齢および性別が一致した健常人10,540人と比較しました。


その結果、新たに癌の診断がなされたのは、PWH43名、一般集団の178名でした(RR 2.42)。

PWHと一般集団におけるがんの累積発症率は、それぞれ4.7%、1.9%でした。

PWHでは、肝細胞癌(HCC)が最多の癌でした(17例)。

HCCおよびHIV関連癌を除外した場合であっても、PWHでは依然として癌発症は高率でした(RR 1.66)。

ただし、肺、大腸・直腸、前立腺の各癌の発症率には有意差はみられませんでした。

PWHは一般集団と比較して、癌診断がより若年であり(45.1対57.2歳、P<0.001)、合併症はより少なかったです。

癌を発症したPWH19例では、試験期間中に死亡しましたが、これらの患者では出血関連死はありませんでした。

生存率は、PWHと一般集団との間で有意差はみられませんでした。


以上、PWHでは癌の累積発生率は高く、より若年で癌の診断がなされて合併症は少なかったですが、生存率には差はみられませんでした。


<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15| 出血性疾患