金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2015年08月10日

インヒビター保有血友病Bとリツキシマブ併用免疫寛容療法

論文紹介です。

関連記事:APTT血友病後天性血友病第V因子インヒビター第VIII因子インヒビターPT-INR

クロスミキシングテスト


インヒビター保有の重症血友病Bに対するリツキシマブを併用した免疫寛容療法

著者名:Kobayashi R, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 26: 580-582, 2015.


<論文の要旨>

インヒビターの発症は、血友病患者における大きな問題の1つです。

血友病Aのインヒビター発症率は25-30%程度と言われているのに対して、血友病Bのインヒビター発症率は1-3%程度と、より低頻度です。

血友病B患者に対する免疫寛容誘導(ITI)については、わずかな症例報告しかありません。


著者らは、インヒビター保有の重症血友病Bに対するリツキシマブを併用した免疫寛容療法について報告してます。

患者は、生後9ヵ月に重症血友病Bと診断され、血漿由来第IX因子製剤(pd FIX)による定期補充療法を受けました。

19回の投与後に、第IX因子インヒビターが発症したために、補充療法は中止されました。

しかし、生後1年時に頭蓋内出血を発症したために、1回目のITIが行われましたが、残念なことにインヒビターの力価を低下できなかったために、このITIは2年後に中止されました。

pd FIXを用いた2回目のITIも失敗した。


14歳時に、リツキシマブを併用したITIが行われました。

患者は、リツキシマブ375mg/m2を週に1回、計4回投与されて、かつ毎日pd FIX 40u/kgの投与を受けました。

リツキシマブを併用したITI開始の4週後には第IX因子インヒビター活性は消失し、治療後1年間インヒビターは検出されませんでした。


本例では、リツキシマブ併用のITIは有効でした。

インヒビター保有の血友病Bに対して、リツキシマブ併用ITIは考慮すべき治療と考えられました。



<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集
へ 

 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02| 出血性疾患