金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年08月19日

非重症血友病A患者インヒビターとインヒビター除去治療

論文紹介です。

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非重症血友病A患者におけるインヒビター/転帰とインヒビター除去治療戦略

著者名:van Velzen AS, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 114: 46-55, 2015.


<論文の要旨>

非重症の血友病A(HA)患者では、インヒビターを発症すると、出血症状は劇的に悪化します。

これらの患者においてインヒビター除去のための至適治療についてはほとんどデータがありません。

著者らは、インヒビター保有非重症HA患者におけるインヒビター除去治療について検討しました。


欧州およびオーストラリアで治療された非重症 HA患者2709名(第VIII因子2-40 IU / DL)のうち、101名ではインヒビターを保有していました(平均中央値37歳、インヒビターピーク力価中央値77BU/ml)。

大多数の患者(71%; 72/101)において、インヒビターは消失していました(自発消失70%、51/73; 除去治療の後75%、21/28)。

インヒビター除去治療戦略は多彩であり、免疫寛容誘導も免疫抑制も行われていました。

永続的な成功(インヒビター消失後に第VIII因子製剤を再投与してもインヒビターが出現しない)は、64%(30/47名)で達成されました。

高力価のインヒビター保有患者では、インヒビター除去治療をすることで初めて永続的なインヒビター消失がみられました。


以上、非重症HA患者では多くの場合インヒビターが自然に消失しますが、再投与すると35%(25/72)の症例で再度インヒビターが出現するため、これらの患者におけるインヒビター消失は、永続的な消失を意味している訳ではありません。

症例によっては、インヒビター除去治療が必要です。


<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31| 出血性疾患