金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2016年02月06日

金沢大学第三内科 <血栓止血研究室> 癌患者とDOAC

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報からです。

今回は、研究室紹介です。


<血栓止血研究室> 癌患者とDOAC

がん



このように、担癌患者でのVTE治療は本当に容易になったと実感しています。

これも、DOAC登場の恩恵ではないかと思います。

効果の点でも、担癌患者さんにおけるワルファリンの効果は今ひとつの印象を持っていましたが、上図のようにDOACの効果の方が優れています。

加えて、DOACはワルファリンと比較して有意に出血の副作用が少ないのも魅力です。


個人的には、抗リン脂質抗体症候群(APS)の不育症症(習慣性流産)に対して、将来DOACを使用できないかと思っていますが(ワルファリンは催奇形性あり)、この将来がいつくるかは不透明です。


DICに対してワルファリン(基質としての凝固因子VII、IX、X、II活性を低下させます)を投与しますと大出血をきたしますので絶対禁忌です。

DICをコントロールするためには、基質としての凝固因子を低下させても全く無効であることは、凝固因子が枯渇した劇症肝炎でもDICを発症することから理解できます。

DICをコントロールするためには、活性型凝固因子(トロンビンやXaなど)を抑制することが不可欠です。

この点、DOACはDICに対して有効である可能性があります(Hayashi T, et al: Ann Intern Med, 2014)。


大動脈瘤、巨大血管腫などに合併する慢性DICの患者さんは少なくなく、DICのために退院しがたいケースも多々あります。

そのような場合、従来であれば、

1)ダナパロイド(半減期の長いヘパリン類)を1(〜2)日に1回外来で静注(線溶活性が極めて高度で出血の懸念のある場合は、経口のトラネキサム酸の併用:ただし安易な併用は致命的な血栓症を誘発しますので専門家に相談して慎重に判断する必要があります)、

2)ヘパリンの在宅自己注射(皮下注)のいずれかを行ってきました。

現在もこれらの治療が標準的ではありますが、DOACでコントロール可能であれば、患者さんにとって大きな恩恵となります。

今後の展開を期待したいと思います。

(続く)金沢大学第三内科 <血栓止血研究室> インデックス
 

<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集
へ  
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44| 血栓止血(血管診療)