金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2018年03月23日

鼻出血、紫斑、血小板低下(CBT)

CBTの再現問題と解説です。

21歳の女性.
学生.鼻出血が止まらないため来院.
下肢に紫斑が見られる.
検査の結果,赤血球360万,白血球6000,血小板2万,PT・APTT正常.骨髄穿刺像を示す.
この疾患で見られるのはどれか.
(骨髄像:巨核球の増加)

 a  補体上昇
 b  フェリチン上昇
 c  直接ビリルビン値上昇
 d  抗血小板抗体
 e  破砕赤血球の出現



(解説)
a 本症例は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP:近年は免疫性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症ともいう)です。補体の変化は見られません。


b フェリチンの低下する代表的疾患は鉄欠乏性貧血など、増加する代表的疾患はヘモクロマトーシス、血球貪食症候群などです。
ITPでは出血のために、鉄欠乏性貧血を合併することがあります。

c 直接ビリルビン値は、肝胆道系疾患などで上昇します。間接ビリルビン値は、溶血などで上昇します。

d ITPでは血小板に対する自己抗体が出現して、脾臓で血小板が破壊されます。

e 破砕赤血球は、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群、HELLP症候群などで出現します。



(正解)d



(ポイント)

特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少性紫斑病:ITP)

血小板に対する自己抗体が産生され、血小板の破壊(脾で)が亢進し、血小板寿命は短縮し出血傾向をきたします。
小児科領域では,先行感染を伴った急性型が多いのに対して(しばしば自然治癒)、内科領域では、先行感染のない慢性型が多いです(女性に多いです)。

【症状】
点状出血、粘膜出血など。

【検査&診断】
・血小板数の低下(PT&APTTは正常)。
・他血液疾患の除外(除外診断)。特に,MDSは確実に否定。
・骨髄巨核球の増加:末梢での血小板破壊に対する反応。
・血小板結合性IgG(PAIgG)の上昇。

【治療】

1)血小板数が数万以上では無治療で経過観察。
2)血小板数が2-3万以下で出血があれば、副腎皮質ステロイド。
3)無効例では,摘脾術を考慮。摘脾術に際して,免疫グロブリン大量療法。
4)ピロリ菌の除菌療法:ピロリ菌陽性の場合はまず考慮。
5)トロンボポエチン受容体作動薬

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59| 医師国家試験・専門医試験対策