金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2018年05月10日

出血時間延長,PT 正常,APTT 延長(CBT)

CBTの再現問題です。



出血時間は延長,PT は正常,APTT は延長を示す疾患で,低下がみられる凝固因子はどれか。

A 第I因子
B 第II因子
C 第III因子
D 第IV因子
E 第V因子
F 第VII因子
G 第VIII因子
H 第IX因子
I 第X因子
J 第XI因子
K 第XII因子
L 第XIII因子



<出血時間が延長する病態>

1)    血小板数低下:特発性血小板減少性紫斑病、急性白血病、再生不良性貧血、肝硬変など。
2)    血小板機能低下:血小板無力症(Glanzmann病)、Bernard-Soulier症候群、von Villebrand病、アスピリンなどのNSAID内服、尿毒症など。
3)    血管壁の脆弱性

(注意)血友病A&B、ビタミンK欠乏症、ワルファリン内服中などの凝固因子に関連した出血性疾患では、出血時間は正常です。



<PTが延長する病態>
第VII、X、V、II、I因子のいずれかの活性が低下した場合

1)    ビタミンK欠乏症、ワルファリン内服中(ワルファリンはビタミンKの拮抗薬)
2)    肝不全、肝硬変などの肝疾患
3)    先天性第VII因子欠損症 など。



<APTTが延長する病態>
第XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子のいずれかの活性が低下した場合

1)    血友病A&B:それぞれ、第VIII因子、IX因子の先天性欠損症
2)    von Villebrand病:von Villebrand病では、von Villebrand因子(VWF)が低下しています。VWFは、第VIII因子のキャリアー蛋白でもあり、VWFが低下すると第VIII因子も低下します。
3)    先天性第XII因子欠損症、先天性第XI因子欠損症
4)    ビタミンK欠乏症(重症例):軽症例では、PT延長のみのことも多いです。ビタミンK依存性凝固因子(半減期の短い順番に、VII、IX、X、II)の中で、ビタミンK欠乏で最初に低下するのは、半減期の短い第VII因子です。
5)    ヘパリン投与中 など。



<本症例>


出血時間という血小板関連検査が延長し、APTT という凝固関連検査も延長しています。
von Villebrand病では、血小板粘着能(血小板機能)が低下するために出血時間が延長します。
VWF低下に伴い第VIII因子活性も低下するために、APTTも延長します。
PTは正常です。
なお蛇足ながら、第VI因子は欠番であり存在しません。



(正解) G 第VIII因子

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06| 医師国家試験・専門医試験対策