金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年07月11日

金沢大学血液内科過去問題の解説:TTP、HUS、HELLPなど

金沢大学血液内科試験(血栓止血領域)過去問題の解説:DICから続く


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血小板数低下をきたす疾患に関する記載として正しいものはどれか.1つ選べ.

a.    溶血性尿毒症症候群(HUS)においては,ADAMTS 13に対する抗体が出現し,ADAMTS 13活性が低下する.

b.    血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)でピロリ菌感染が証明されれば,除菌療法が約5割の症例で血小板数を上昇させる.

c.    HELLP症候群の3徴候は,溶血,腎不全,血小板数低下である.

d.    特発性血小板減少性紫斑病(ITP)においては,平均血小板容積(mean platelet volume: MPV)が上昇する.

e.    挙児を希望する抗リン脂質抗体症候群(APS)の女性患者に対しては,ワルファリンが有効である.
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溶血性尿毒症症候群(HUS)は、
1)血小板数減少
2)溶血性貧血
3)急性腎不全
を、3主徴としています。

腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic E.coli:EHEC)から産生されるベロ毒素と、HUS発症との関連が指摘されています。腸管出血性大腸菌O-157によるものは頻度も高く有名です。問題文のADAMTS 13に対する抗体が出現し、ADAMTS 13活性が低下するのは、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)でになります。


血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、
1)    血小板数減少
2)    溶血性貧血
3)    動揺する精神神経症状
4)    発熱
5)    腎機能障害
を、5主徴としています。

典型例では、ADAMTS 13(別名:von Willebrand因子切断酵素、VWF-cleaving protease、VWF-CP)に対する自己抗体が出現し,ADAMTS 13活性が低下します。

このADAMTS 13活性が低下しますと、von Willebrand因子(VWF)の切断が行われず、unusually- large VWF マルチマー(UL-VWFM)が出現し、血小板凝集、血小板血栓形成が進行することになります。

なお、Upshaw-Schulman症候群は、先天性TTPとも言える疾患です。ADAMTS13遺伝子の異常のために先天性にADAMTS13が産生されず、先天性にTTP病態をきたします。

なお、問題文のピロリ菌感染が証明されれば,除菌療法が約5割の症例で血小板数を上昇させるというのは、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)です。


HELLP症候群  は,
1)    溶血(Hemolysis)
2)    肝酵素上昇(Elevated Liver Enzyme)
3)    血小板数低下(Low Platelet)
を3徴候としています(医師国家試験既出)。


上記の3病態などを、
血栓性微小血管障害症 (thrombotic microangiopathy, TMA)
と総称しています。
血管内皮障害や血小板活性化に伴う血栓形成、血小板数低下、臓器障害(疾患による特異性あり)は共通病態になります。

血栓性微小血管障害症 (TMA)
1)    TTP:脳
2)    HUS:腎
3)    HELLP:肝


特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
においては,平均血小板容積(mean platelet volume: MPV)や、血小板分布幅(platelet distribution width: PDW)が上昇します。

血小板のマーカーと言えば、血小板数があまりにも有名ですが、MPV、PDWも血小板関連マーカーです。管理人は、MPVやPDWは、隠れた血小板の黄金のマーカーと思っています(関連記事:MPV、PDW(血小板マーカー)←試験前に必ず確認しておきましょう)。

なお、再生不良性貧血では、MPV、PDWともに低下します。この点もその理由とともに理解しておきましょう。


抗リン脂質抗体症候群(APS)
は極めて頻度の高い後天性血栓性素因です。
関連記事(抗リン脂質抗体症候群(インデックスページ))もご覧いただければと思います。

APSにおける血栓症の発症予防にはワーファリン(ワーファリン:経口抗凝固薬、PT-INR)が有効であるというN Engl J Medの有名な報告が2報あります。

ただし、重要な注意点があります。

ワルファリンには、抗血栓薬の宿命である出血の副作用のほかに、女性では催奇形性の副作用の問題があります。ですから、挙児を希望する女性患者に対しては、ワルファリンを使用してはいけません。




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:32| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0)

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