金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年07月10日

金沢大学血液内科試験(血栓止血領域)過去問題の解説:DIC

金沢大学血液内科 病棟実習試験:血栓止血領域過去問解説から続く

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播種性血管内凝固症候群(DIC)に関する記載として誤りはどれか.1つ選べ.

a.急性前骨髄球性白血病に合併したDICにおいては, FDPが著増しやすい.

b. 転移性前立腺癌に合併したDICにおいては,血中プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)が上昇しやすい.

c. 敗血症に合併したDICにおいては,血中フィブリノゲンが低下しにくい.

d. 腹部大動脈瘤に合併したDICにおいては,血中プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)が上昇しにくい.

e. 線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC)においては,血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が上昇しにくい.
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急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)
は、線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC)の、代表的基礎疾患です。


播種性血管内凝固症候群(DIC):DICの病型分類


線溶亢進型DIC
の代表的基礎疾患としては、以下が挙げられます。
1)    急性前骨髄球性白血病(APL)
2)    腹部大動脈瘤
3)    転移性前立腺癌
などが知られています。

APL
に合併したDICにおいては線溶活性化が高度であるために、形成された血栓が溶解(分解)されやすく、FDP(血栓分解産物を反映)が著増します。

転移性前立腺癌
は、上述のように線溶亢進型DICをきたすことが知られています。線溶活性化マーカーである血中プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)は、しばしば著増します。

敗血症は、線溶抑制型DIC(旧名称:凝固優位型DIC)の代表的基礎疾患です。線溶が抑制されていますので、FDPPICの上昇は軽度にとどまることが多いです。一方、敗血症に伴う強い炎症反応のためacute phase reactant(急性期反応物質)であるフィブリノゲンは本来上昇しますので、DICを合併してもあまりフィブリノゲンは低下しません。

プラスミノゲンアクチベーターインヒビター
(PAI)は、線溶阻止因子です。PAIは、線溶因子である組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)と、1:1結合することで、t-PAの活性を抑制します。敗血症に合併したDICのような線溶抑制型DICではPAIは著増します(PAIが著増するために線溶抑制型DICになるとも言えます)。
一方、腹部大動脈瘤に合併したDICにおいては、PAIの上昇はなく、線溶亢進型DICとなります。

播種性血管内凝固症候群(DIC):DICの病型分類


DICの本態は
、全身性持続性の著明な凝固活性化状態です。ですから、トロンビンが次々と産生されています。どのようなタイプのDICであったとしても、トロンビン産生量を反映するTATは著増しています。
換言しますと、TATがもし正常であればトロンビン産生はないことになりますから、この1点のみでDICを否定できることになります。
今回の問題では、eの選択肢が間違っていることになります。




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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:46| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0)

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