金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年02月15日

von Willebrand病における予防治療

血友病の治療目標の一つに関節症の進行を阻止することが上げられます。

このために、最近では凝固因子製剤の予防投与が行われるようになり、有効との報告が多数みられるようになってきました。

今回紹介させていただく論文は、凝固因子製剤の予防投与のvon Willebrand病バージョンということになります。

参考:血友病とvon Willebrand病の比較



「von Willebrand病における予防治療の意義」

著者名:Abshire T.
雑誌名: Thromb Res 124 Suppl 1 : S15-19, 2009.

<論文の要旨>

von Willebrand病(VWD)症例の一部では強力な治療を要する重症出血をきたすことがあります。

VWD3型の40%の症例では、関節内出血をきたし血友病性関節症の病態となることが知られています。

また、VWD2A型または2B型の症例では、胃腸出血の繰り返しのためangiodysplasiaをきたす懸念があります。

小児VWDでは、鼻出血(頻回、長い持続のため貧血の原因となります)をきたしやすく、生涯の健康、発育、QOLに悪影響を及ぼします。

これらの症例に対して、VWDを含有した製剤を予防的に輸注することは、出血およびそれに伴う合併症を軽減するのに有用です。


臨床試験の結果より、予防投与は、VWD3型および一部のVWD 1または2型に対して有効であると考えられています。

The VWD International Prophylaxis (VIP) trialが進行中であり、この結果がまとまれば、どのタイプのVWDに対して予防投与が有用であるか明らかになるものと考えられます。



【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:06| 出血性疾患