金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年05月02日

血栓止血学会(鹿児島)学会の寄り道:後天性血友病ほか

血栓止血学会(鹿児島)学会の寄り道:西郷隆盛ほか より続く。

 

【学会の寄り道】(2)

今回の日本血栓止血学会学術集会では集会本体と別に、サテライトセミナーが4月24、25日に屋久島で開かれました。会長の丸山先生以下約20名の方々が参加されました。

「血栓止血学の今と展望」をメインテーマに下記の演題がありました。

 

4月24日イブニングセミナー

Aida Inbal 先生(Beilinson Hospital, Rabin Medical Center, Israel)
"FXIII deficiency and cellular extra coagulant activities of FXIII"


4月25日モーニングセミナー

鈴木宏治 先生(三重大学 理事・副学長)
「日本血栓止血学会的温故知新」

小出武比古 先生(兵庫県立大学大学院生命理学研究科)
「『温故知新』アンチトロンビンの構造と機能の研究30年を振り返る」

森田隆司 先生(順天堂大学大学院医学研究科 生化学・生体防御学)
「ヘビ毒からの多彩な新規タンパク質の探索」


ランチョンセミナー(共催:ノボノルディスクファーマ(株))

新井盛大 先生(ノボノルディスクファーマ(株)開発本部)
「rFVIIaおよびそのアナログの止血作用機序」


イブニングセミナー
橋口照人 先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 血管代謝病態解析学)
"Degradation of non-hemostatic molecules in DIC/MOF"


それぞれ面白い内容で、勉強になりました。
少人数で、時にはビールが入ったレクチャーもありましたので、いい意味で談論風発なセミナーでした。

特に印象に残りましたのは、一つは新井先生のお話の中で、後天性血友病の出血症状に対して、いわゆるdose intensiveにノボセブンを使用することが有効であること(これは血液腫瘍の化学療法のコンセプトに類似していること)、さらに遺伝子組換え活性型第7因子製剤(rFVIIa)のlong acitiveな(12時間から数日?)新薬がP2か3まで進み、近い将来臨床使用可能になる見通しであり、病状によって現在のノボセブンと使い分けるようになるのでないかとのことでした。

以前出産後の止血困難から診断された、後天性血友病Aの患者さんを拝見させていただいたことがありました。その際もノボセブンを使用しましたが、奏効し、すぐに止血効果が出てきました。ただ半減期が短く、3−4時間おきの静注投与が必要であり、正直少々手間だった印象があります(さらに単価も高く、結果として高額になり、レセプトで半年がかりの苦労だった記憶があります)。

言われたようにlong activeなrFVIIaが使えるようになれば、少なくとも現在の手間はわずかでも軽減できそうです。

 

さらにもう一つは、橋口先生がいわゆる「複雑系」の考えをベースに、さらにご自身の研究テーマの一つであるCrow‐Fukase症候群(POEMS症候群)の研究から(これらが進行すると播種性血管内凝固症候群(DIC)が起こる)、病勢の進行とともに蛋白断片の種類・分布が異なること、将来的にはこの違いを利用してDICの何らかのマーカーにできるのではないかというものでした。不勉強で細かいことは至らないのですが、コンセプトとして非常に印象に残りました。

これらのセミナーの間にはフリータイムがあり、わずかですが屋久島内を見ることができました。

(続く)

血栓止血学会(鹿児島)学会の寄り道:屋久島の飛魚ほか

 

【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47| 血栓止血(血管診療) | コメント(0)

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