金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年07月31日

出血症状が軽度である重症血友病の特徴

今回紹介させていただく論文は、出血症状が軽度である重症血友病の特徴について報告しています。

 

「出血症状が軽度である重症血友病の特徴

著者名:Santagostino E, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 737-743, 2010.


<論文の要旨>


重症血友病(FVIIIまたはFIX<1 IU/dl)
であっても、出血症状の重症度は種々であることが知られています。FVIII/IXの遺伝子型が、残存凝固因子活性を決定する主因と考えられていますが、同じ遺伝子型であっても出血症状の程度に差がみられます。

著者らは、出血症状がごく軽度な重症血友病(n=22;I群)と、出血症状が高度な重症血友病(n=50;II群)を対象に、遺伝子型と内因性トロンビン形成能(ETP)を検討しました。

その結果、I群においてはII群と比較して、血友病Bである比率が高く、重症のFVIII/IXの遺伝子変異(null mutations)が低率であり、FVIII/IXの抗原量が高く、多血小板血漿(PRP)を用いたETPが高いという結果でした。

多変量解析を行ったところ、null mutationsでないことのみが、軽症の出血症状であることの独立した予知因子でした。

以上、null mutationsでないことは出血症状を規定する因子と考えられました。

また、PRPを用いたETP測定によって出血症状の重症度を判別できるものと考えられました。


【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06| 出血性疾患