金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2010年08月02日

病態:血球貪食症候群(HPS)(1)

 

今回から、血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome: HPS)をシリーズでお届けしたいと思います。

 

HPS

 


【病態】

血球貪食症候群(HPS)は全身の炎症性疾患で、血球貪食リンパ組織球増多症(hemophagocytic lymphohistiocytosis: HLH)とも呼ばれます。

日本においては、年間80万人に1人が発症し、常染色体劣性遺伝病の家族性HPS/HLH (familial HPS/HLH: FHL)では、出生5万人から30万人あたり1人の頻度です。

Ishii E, et al: Nationwide survey of hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan. Int J Hematol 86:58-65, 2007.

1歳未満の発症が約50%を占め、1歳から29歳が25%、残りは30歳以上です。

遺伝性か遺伝子異常が証明できれば一次性(遺伝性)HPS/HLH、それ以外は二次性(反応性)HPS/HLHと診断されます分類:血球貪食症候群(HPS)(2) 

 

一次性HPS/HLHも、発症には感染症が契機になりやすいことが知られています。

現在同定されている原因遺伝子は、NK細胞・T細胞の細胞傷害活性に関連するものが多いです。少数の若年成人例や胎児期発症を除き、一次性HPS/HLHは小児期(多くは3か月以内)に起こります。


成人HPS/HLHは、通常二次性(反応性)です。

発症機序は、マクロファージや組織球などの抗原提示細胞とCD8陽性T細胞が持続性かつ過剰に活性化することで高サイトカイン血症が起こり、組織傷害や血球減少、凝固異常などが生じると考えられています。

Filipovich AH: Hemophagocytic lymphohistiocytosis (HLH) and related disorders. Hematology Am Soc Hematol Educ Program:127-31, 2009.

Henter J-I, et al: HLH-2004: Diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Pediatric Blood & Cancer 48:124-131, 2007.

最も重要なサイトカインはIFNγで、他にTNFα、M-CSF、IL-1、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10の関与が示唆されています。

高ケモカイン血症の関与も推測されています。

また、一次性・二次性を問わず、HPS/HLHでは、NK細胞および細胞傷害性T細胞の機能異常が見られることが多いです。

二次性HPS/HLHのうち、主に自己免疫機序でマクロファージとT細胞の活性化がみられるものはマクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome: MAS)と呼ばれます。

なお以前、悪性組織球症(malignant histiocytosis: MH)と呼ばれていた疾患は、ほぼ全て悪性リンパ腫関連HPS/HLH (lymphoma-associated HPS/HLH: LAHS)であったと考えられています。

 

(続く)

分類:血球貪食症候群(HPS)(2) 

 

【関連記事】NETセミナー

汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について

造血幹細胞移植

移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断


【シリーズ
溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)

【シリーズ】造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)

【シリーズ
造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)


【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ

金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12| 血液疾患(汎血球減少、移植他)