金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年10月08日

遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病):遺伝子変異

遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)(Osler病などとも言う)は、そのつもりで診察しないと、診断をすりぬけてしまう可能性のある疾患ではないかと思います。


また、鼻血が多い症状の一つであるため、von Willebrand病と誤診される懸念もあると思います。

さらに、HHTとvon Willebrand病の合併も皆無ではないでしょう。

今回紹介させていただく遺伝性出血性毛細血管拡張症の論文は総説なのですが、2分割でお届けしたいと思います。まずは前編です。

 

 

遺伝性出血性毛細血管拡張;分子生物から臨床まで(その1)

著者名:Dupuis-Girod S, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 1447-1456, 2010. (その1)



<論文の要旨>


遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia ; HHT)(Rendu-Osler-Weber症候群とも言う)は、常染色体優性遺伝する血管性疾患であり(発生率1/10,000人)、重症でくり返す鼻出血、粘膜や皮膚の毛細血管拡張症、致命症となることもある臓器動静脈奇形(肺、肝、脳、脊髄などで)を特徴とします。

胃腸粘膜の毛細血管拡張が見られることもあり、重症の消化管出血の原因となりえます。


HHT type Iは第9染色体のendoglin遺伝子の変異(ENG変異)、HHT type IIは第12染色体のALK-1遺伝子の変異(ACVRL1変異)が原因と考えられています。

肺や脳AVMはHHT2よりHHT1に多く発生します。

上記の片方または両者の変異が臨床的には最も多いです。


加えて、Smad4遺伝子の変異(MADH4変異)は、若年性ポリポーシスとHHTの合併をきたすことが報告されています。また最近、第5染色体上のHHT3 locus(5q31.3-5q32)も報告されました。

HHTに対する管理はこの20年で変貌しました(治療と合併症予防の両面で)。



<補足>

HHTの診断基準;3項目以上で確診、2項目で疑診

1)    鼻出血;自然出血、再発性

2)    毛細血管拡張症;多発性、特徴的部位(顔面、口唇、口腔、指)

3)    内臓動静脈奇形(肺、脳、肝、脊髄)または胃腸粘膜の毛細血管拡張

4)    一親等以内の家族歴の存在


備考:endoglin gene やALK-1 geneなどの遺伝子解析により診断がより確実となります。

 


【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37| 出血性疾患