金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2010年10月25日

網血小板:幼若血小板比率(IPF)(1)

IPF1

 

幼若血小板比率(immature platelet fraction:IPF)は、血小板の代謝をみる上で、有用なマーカーと期待されています。

現時点では、どこの施設でも測定可能という訳ではないのですが、今後は次第に浸透していくのではないかと推測されます。

幼若血小板比率(IPF)の記事をシリーズでお届けしたいと思います。




ーーーーーーーーーーーーー

網血小板 reticulated platelet (幼若血小板 immature platelet)

1)骨髄から放出直後の血小板

2)細胞質内のRNAが豊富

3)骨髄の血小板産生能を反映

4)骨髄の巨核数と相関

5)自動血球分析装置で自動計測可能

ーーーーーーーーーーーーー

骨髄から放たれたばかりの新しい血小板は、細胞質がRNAに富んでおり、網血小板(reticulated platelet: RP)と呼ばれています(上表)。

 Ingram M, Coopersmith A: Reticulated platelets following acute blood loss. Br J Haematol 17:225-9, 1969

Ando M, Iwamoto Y, Suda A, et al: New insights into the thrombopoietic status of patients on dialysis through the evaluation of megakaryocytopoiesis in bone marrow and of endogenous thrombopoietin levels. Blood 97:915-921, 2001

 

血小板寿命 3-10日(平均約8日)のうち、最初の24-36時間は網血小板の状態にあると考えられます。

Ault KA, Knowles C: In vivo biotinylation demonstrates that reticulated platelets are the youngest platelets in circulation. Exp Hematol 23:996-1001, 1995

 

網血小板が骨髄の血小板産生能を反映することは、以前から知られていました。

これは、やはりRNAを多く含む網赤血球が、赤血球産生能の指標となることに似ています。

網血小板は従来thiazole orangeとフローサイトメトリー法で測定されていましたが、特殊技術が必要なため、一般への普及が遅れていました。

最近、汎用性に優れたXE IPF master(シスメックス社)が開発され、網血小板は、幼若血小板比率(immature platelet fraction: IPF)として高精度の自動測定が可能となりました(上図)。

 

Ruisi MM, Psaila B, Ward MJ, et al: Stability of measurement of the immature platelet fraction. Am J Hematol 85:622-4, 2010

Koike Y, Miyazaki K, Higashihara M, et al: Clinical significance of detection of immature platelets: comparison between percentage of reticulated platelets as detected by flow cytometry and immature platelet fraction as detected by automated measurement. European Journal of Haematology 84:183-184, 2010

(続く)血小板減少症:幼若血小板比率(IPF)(2)

 

 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19| 出血性疾患