金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年01月18日

インヒビター陽性血友病A:第VIII因子製剤とバイパス製剤の併用

血友病Aに、第VIII因子インヒビターを発症した場合に、止血目的にはバイパス製剤(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)、活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC))が用いられます(参考:後天性血友病)。

さらに、この第VIII因子インヒビターをなくす目的に免疫寛容療法が行われます。
この免疫寛容療法は、止血を目的としたわけでないのですが、免疫寛容療法中は出血が少なくなるようです。

今回紹介させていただく論文は、この点について論じています。

 

「インヒビター陽性血友病A血漿における第VIII因子製剤とバイパス製剤の併用効果

著者名:Klintman J, et al.
雑誌名:Br J Haematol 151: 381-386, 2010.


<論文の要旨>

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)や活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC)といったバイパス製剤は、高力価のインヒビターを発症した血友病A患者の止血治療のために重要です。


第VIII因子インヒビターを発症した患者に対して免疫寛容療法を行うと、出血の頻度は低下することが臨床的に知られていました。

この理由としては、輸注された第VIII因子製剤の効果ではないかと考えられています(凝固検査では第VIII因子活性の上昇がみられなくても)。


著者らは、インヒビター陽性血友病A 11症例の血漿を用いて、バイパス製剤や第VIII因子製剤(5種類)のトロンビン形成(TG)に及ぼす影響をin vitroにて検討しました。


その結果、APCC製剤と第VIII因子製剤の併用は、4種の第VIII因子製剤においてTGの相乗効果が観察されました。

rFVIIaと第VIII因子製剤の併用の場合は相加効果に留まりました。


以上、第VIII因子インヒビター陽性血漿を用いてTGを検討すると、バイパス製剤は第VIII因子製剤の併用により効果が増大するものと考えられました。

血友病Aのインヒビター症例を対象とした臨床の場においても、バイパス製剤に第VIII因子製剤を併用する意義がある可能性があり、今後の検討課題と考えられました。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 出血性疾患