金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年03月06日

術後の後天性血友病A

臨床血液に報告された後天性血友病Aに関する論文を紹介させていただきます。

後天性血友病は、最近何かと話題になります。この論文でも、100万人に1〜4人と書かれていますが、実はもっと多い(本疾患であるにもかかわらず、診断されていない症例が少なくない)のではないかと管理人は思っています。

 

「大動脈弓部人工血管置換術後に腹直筋血腫および骨盤内血腫を併発した後天性血友病A

著者名:牛木真理子 他.
雑誌名:臨床血液   52: 8-13, 2011.


<論文の要旨>

後天性血友病は100万人に1〜4人の罹患率で、発症者の87%に重篤な出血を引き起こし、死亡率も10〜22%と報告されています。

一般に高齢者および分娩後に多く、さらに自己免疫疾患、腫瘍、糖尿病患者にみられます。

今回著者らは、大動脈弓部人工血管置換術7か月後に、重篤な腹直筋血腫や骨盤内血腫を併発した後天性血友病の1例を経験したので報告しています。

症例は、60歳男性です。

大動脈弓部人工血管置換術後7か月で腸瘻造設を施行したところ、創部の止血困難がみられました。

腹直筋血腫、骨盤内血腫を合併しました。

APTT延長(65.9sec)と第VIII因子活性1%未満、第VIII因子インヒビター19.5U/mlが認められて、後天性血友病と診断されました。

著しい血色素の低下が認められ、活性化第VII因子製剤9.6mgを25回投与とステロイドバルス療法を施行しました(参考:止血剤)。

一般に手術後に後天性血友病を併発することは、手術直後または3か月以内ですが、本例は術後7か月に出現し、特記すべき症例と考えられました。

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48| 出血性疾患