金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年04月28日

金沢大学第三内科「血液・移植研究グループ」紹介(2)

金沢大学第三内科「血液・移植研究グループ」紹介(1)から続く。


研 究



血液・移植研究グループの主な研究テーマは、中尾教授のライフワークである「再生不良性貧血の病態解明」「造血幹細胞移植による難治性血液疾患の治療」です。

学内在籍メンバーの研究内容を紹介します。


今年度から研究期間に入った大学院生の細川晃平先生は、保健学科博士課程の片桐孝和君とともに、再生不良性貧血における染色体異常の意義やHLA haplotypeのlossに関する研究を開始しました。


ママになった清木ゆう先生は、産休も早めに切り上げて研究生活に復帰しました。細胞表面上に存在する全てのGPIアンカー型蛋白のアンカー部分と特異的に結合するFLARE抗体を用いることによって微少のPNH型血球検出の精度向上を目指しています。


大畑欣也先生は臍帯血移植後のNK細胞による抗腫瘍効果に着目し、「NK細胞に対する免疫抑制剤の影響」というテーマで学位論文を仕上げ、Biol Blood Marrow Transplantation誌にアクセプトされました。

臍帯血移植では移植後早期から回復するNK細胞の抗腫瘍効果が重要と考えられています。しかし、臍帯血ミニ移植時のGVHD予防にしばしば用いられるMMFが、こうしたNK細胞の機能を弱めていることを初めて報告しました。


望月果奈子先生は「巨核球増加を伴わない血小板減少症」症例を対象とした前方視的コホート研究をすすめています。

日常臨床では、骨髄の巨核球が増加していないために特発性血小板減少性紫斑病とは診断できない血小板減少症にしばしば遭遇します。

このような患者の中に、微少のPNH型血球が検出されシクロスポリンが著効した例がありました。

こうした経験から、「巨核球増加を伴わない血小板減少症」患者の中には、PNH型血球陽性のいわば「前」再生不良性貧血といった病態の患者が含まれており、診断後早期にシクロスポリンを投与することによって血小板減少を改善させることができるのではないかと考えています。


高松博幸先生はNTT西日本金沢病院での診療に従事しながら(同門会報執筆時点)、造血におけるモエシンの機能を検討しています。

今回検討したモエシンKOマウスでは野生型マウスと比べて有意に白血球減少、赤血球減少、低体重、脾腫が認められました。

また、モエシン蛋白質を野生型マウスに免役すると、高度の白血球減少と貧血が生じました。

以上からモエシンは造血に何らかの関与があると考えています。


近藤恭夫先生は、白血病細胞で高発現しているGITRL(抑制性補助シグナル分子)がGITRと結合することによって白血病細胞内でのIDO活性を高めて抗白血病免疫を抑制することを解明しました。


山宏人は「再生不良性における免疫病態マーカーの意義」や「シクロスポリン3時間点滴によるGVHD予防」を検証する臨床試験の治療成績をまとめています。


杉森尚美先生は、PNH型血球陽性骨髄不全患者の臨床的特徴をスコア化し、スコアの高低によってPNH型血球の有無を予想できるかどうかを検討しています。


高見昭良先生は博士研究員のLuis Espinoza先生とともに、NKG2DやIL-17、パーフォリンなどの遺伝子多型が非血液ドナーからの骨髄移植の成績に影響を及ぼすことを明らかにしました。

保健学科修士課程の中田勝也君もLuis Espinoza先生の手ほどきを受けて研究を開始しました。


日本成人白血病研究グループ(JALSG)のコアメンバーである大竹茂樹先生はJALSG AML201の試験成績を解析し、急性骨髄性白血病における寛解導入療法では通常量のイダルビシンと高用量のダウノルビシンでは差がないことをBlood誌に発表しました。


それぞれのテーマに沿った基礎研究・臨床研究を精力的に進める一方、こうした研究に一緒に取り組んでくれる仲間が増えるよう、メンバー一同リクルート活動にも力を入れています。

 

【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連

造血幹細胞移植入門(インデックス)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58| 血液内科