金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2011年06月21日

活性型第VII因子製剤(ノボセブン)適応外使用の是非

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤の保険適応外使用の現状より続く。

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン)は、第VIII因子インヒビターに対してのみの保険適応ですが、しばしば適応外使用が行われています。

今回紹介させていただく論文は、適応外使用に対して、警鐘を鳴らすような論文です。


関連記事:
先天性血栓性素因と病態
血友病後天性血友病抗リン脂質抗体症候群止血剤の種類臨床検査からみた血栓症血液凝固検査入門深部静脈血栓症/肺塞栓

 

「遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)適応外使用の是非について

著者名:Yank V, et al.
雑誌名:Ann Intern Med 154: 529-540, 2011.


<論文の要旨>

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の保険適応は、インヒビター保有血友病に対する止血治療ですが、適応外使用が増加してます。

著者らはrFVIIa適応外使用の是非について、5疾患(頭蓋内出血、心手術、外傷、肝移植、前立腺摘出術)において文献的解析を行いました。

RCT16試験、比較観察26試験、比較対象のない22試験が検討対象となりました。


頭蓋内出血に関しては、死亡率はrFVIIaによって改善しませんでした。動脈血栓塞栓症は、rFVIIaの中等用量、高用量において有意に増加しました。

成人の心手術に関しては、rFVIIaの使用により死亡率には差が見られませんでしたが、血栓塞栓症は増加しました。

外傷に関しては、rFVIIaの使用により死亡率や血栓塞栓症には差がみられませんでしたが、ARDSは減少しました。

比較観察試験における死亡率は、RCTsよりも高い結果でした。


以上、今回検討した5疾患においては、rFVIIaの使用によって死亡率は低下しないものと考えられた。

むしろ、いくつかの病態においては血栓塞栓症を増加させるものと考えられた。

 
 
 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患