金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年06月23日

小児血友病の高カルシウム尿症と骨粗鬆症

小児血友病において、高カルシウム尿症は骨格障害のサインであることを報告している論文を紹介させていただきます。

血友病患者で、血中&尿中カルシウム濃度を測定した点は、新鮮に感じます。


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「小児血友病における高カルシウム尿症は骨格障害のサインである

著者名:Banta S, et al.
雑誌名:Br J Haematol 153: 364-371, 2011.


<論文の要旨>

血友病患者は、小児期において既に骨密度が低下する危険因子を有しています。

具体的には、関節内出血に伴った運動能力の低下、血友病性関節症による運動量の低下です。


欠損している凝固因子を定期的に補充することで、血友病性関節症を軽減したり予防することが可能になりました。

フィンランドの重症小児血友病患者は、早期より定期補充による予防治療が開始されており、運動も積極的に行っています。

著者らは、予防治療は小児の骨密度の発達を正常化するという仮説を持っています。


著者らが検討した対象は、血友病29例(軽症2例、中等症6例、重症21例)で、年齢の一致した健常小児58人を対照としました。

骨の発達は、骨折歴、血液&尿生化学検査、骨密度、椎体レントゲン写真で評価しました。


その結果、血友病患者は、尿中カルシウム濃度および血中カルシウム濃度が有意に高く、骨吸収が低下していました。


以上、血友病患者では小児期より骨発達に障害を生じており、その結果として尿へのカルシウム排出が増加し骨代謝が変化をうけているものと考えられた。 

このことが、血友病患者の骨粗鬆症につながるものと考えられました。

 
 
 【リンク】

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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16| 出血性疾患