金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月07日

血漿止血効果と血小板マイクロパーティクル(MP)

凝固因子の補充、止血目的で、新鮮凍結血漿(FFP)が用いられることは多いです。

FFPの解凍後、通常は速やかに使用されると思いますが、そうできないこともあります。

今回紹介させていただく論文は、解凍後に血漿製剤の止血効果は減弱するけれども、その理由は血小板マイクロパーティクル(MP)が減少するためと報告しています。

 

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「保存血漿の止血効果の減弱は血小板マイクロパーティクルの減少による

著者名:Matijevic N, et al.
雑誌名:Thromb Res 128: 35-41, 2011.


<論文の要旨>

外傷救命センターでは、止血目的に解凍血漿(thawed plasma:TP)が用いられます。

1〜6℃で保存された場合には、TPは5日間まで使用が許可されています。

しかし、保存に伴い血小板マイクロパーティクル(MP)(血漿の止血作用に重要)がどうなるか不明です。


著者らは、TP初日(FFP-0)と、5日後(FFP-5)を比較検討しました。

FFP-0においては残存細胞のほとんど(94%)は血小板でしたが、MPs 4408×103/Lも含まれました。

FFP-5ではMPは50%に低下し、向凝固活性は29%に低下しました。トロンビン形成能も54%に低下し、トロンボエラストグラフによる凝固反応も緩徐でした。

MPをろ過して除去するとトロンビン形成能は低下しましたが、MPを補充すると復活しました。


以上、FFP-0と比較してFFP-5の止血能は低下しますが、その原因としてMPが低下するためと考えられました。

解凍血漿(TP)中の血小板マイクロパーティクル(MP)の存在は、血漿製剤が止血効果を発揮するのに有効と考えられました。

 
 
 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患