金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月30日

凝固と炎症のクロストーク1:敗血症モデル

凝固と炎症のクロストーク(ヒストン関連)ー インデックス ー

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京都で国際血栓止血学会(ISTH)が行われました。

注目すべきテーマ、話題がいくつもありましたが、その中でヒストンの話題が興味ありました。

金沢に戻って、PubMedで検索しましたら、発表内容の多くが既にインターネット上で閲覧することができましたので、少しずつ紹介させていただきたいと思います。

興味を持ったきっかけは、State-of-the-Art Lecture
Crosstalk between hemostasis and inflammation(by Dr. Esmon)です。

いわゆる「凝固と炎症のクロストーク」です。

 

Extracellular histones are major mediators of death in sepsis.

Xu J, Zhang X, Pelayo R, Monestier M, Ammollo CT, Semeraro F, Taylor FB, Esmon NL, Lupu F, Esmon CT.

Nat Med. 2009 Nov;15(11):1318-21.


ヒストンは、細胞内でDNAを結合させるタンパクとして知られています。このヒストンは過剰な炎症反応により細胞が壊死すると細胞外へ放出されますが、放出されたヒストンの役割は知られていませんでした。

敗血症に代表されますように、過剰な炎症反応は疾患へつながっていきます。

著者らは、敗血症における細胞外へのヒストンの遊離が、血管内皮障害、臓器障害、最終的には死に寄与していることを究明しています。このヒストンのマイナスの作用は、抗ヒストン抗体や活性化プロテインC(APC)によって制御することが可能でした。



著者らの実験結果によりますと、抗ヒストン抗体は、LPS、TNF、盲腸結紮(&穿刺)で誘発されたマウス敗血症モデルにおける死亡率を有意に低下させました。

細胞外ヒストンは、血管内皮を障害させ(in vitro)、マウスを致命症としました。

In vivoでヒストンを投与しますと、好中球遊走化、血管内皮の空胞化、肺胞内出血、大血管および小血管の血栓をきたしました。

ヒヒに対してE.coliを投与しますと、血中にヒストンが出現し、血中ヒストン濃度の上昇は腎障害を伴うことが明らかになりました。

活性化プロテインC(APC)はヒストンを分解して、ヒストンの毒性を低下させました。


ヒヒに対して、E.coliとともにAPCを投与したり、またはマウスにヒストンとともにAPCを投与しますと、死亡率は有意に低下しました。

非致死量のLPSモデルにおいてプロテインCの活性化をブロックしますと致命症になりましたが、ヒストンに対する抗体を投与することで回復させることができました。

以上、敗血症やその他の炎症疾患において、ヒストンを制御することは有効な治療戦略になる可能性があります。

 
 
 
  【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42| DIC