金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年08月12日

国際血栓止血学会(ISTH):SSC(DIC)白血病/APL

国際血栓止血学会(ISTH)/学術標準化委員会(SSC)/DIC部会の報告を続けさせていただきます。

国際血栓止血学会(ISTH):SSC(DIC)診断基準より続く。

ISTH/DIC部会(SSCシンポジウム)ーインデックスー

凝固と炎症のクロストーク(ヒストン・トロンボモジュリン・プロテインC)ーインデックスー

 

Subcommittee on Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)

2011年7月24日(日)9:00-12:00

SSC Session(7)


iInvolvement of tissue factor and annexin II in pathoclinical profile of acute promyelocytic leukemia

アネキシンII


Wangらは、急性前骨髄球性白血病(APL)の特徴として重症出血と、時に血栓症の両者があることを指摘しました。

APLにおけるDIC合併率は826/1040(79.4%)と、その他のAML32.3%と比較して高率です。


APLに対する分化誘導治療薬であるATRAは、APLのDICや出血症状を改善するのが特徴です。APL細胞においては、組織因子やアネキシンIIが過剰に発現しており、このことがAPLに合併したDICを特徴付けています(著明な線溶活性化と出血症状)(Liu Y, Wang Z, et al: Leukemia Res 35: 879-884, 2011)。


Wangらは、APL細胞やNB4(APL細胞株)に対して、ATRA三酸化ヒ素(Arsenic trioxide、亜ヒ酸:ATO)を添加して、組織因子やアネキシンIIの発現に対する影響を検討しました(NB4はAPLの細胞株であり、線溶活性化能が高いことが確認されましたが、HL60では線溶活性化能はみられませんでした)。

その結果、ATRAやATOは、組織因子(procoagulant activityとしても評価)、アネキシンIIの発現を有意に抑制しました(ダウノルビシンでは抑制しないどころか、かえって上昇させました)

 
ATRAやATOの登場により、APLの予後は飛躍的に改善しましたが、重症出血による早期死亡症例が依然として10%程度もあり、お研究が行われるべきです。




【リンク】

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05| DIC