金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年11月12日

咳嗽の発生機序:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群2

慢性咳嗽:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群1 より続く。

咳2

 


咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(2):咳嗽の発生機序

 
湿性咳嗽は、気道の過剰分泌によって気道内に貯留した喀痰を喀出するための生理的咳嗽です。

気道内に貯留した喀痰が気道壁表層に存在する咳受容体を直接的に刺激して咳嗽反応が惹起されます。


一方、乾性咳嗽は、咳嗽が一次的に発生する病的咳嗽です。

乾性咳嗽は、運動の始まり、運動の後、会話、空気の温度の変化、線香やタバコの煙、香水のにおい、などによって誘発されます。

また、咳嗽は就寝時や早朝に起こりやすく、重症となると一晩中咳込むため、睡眠が著しく障害されます。

また、女性では咳発作によって尿失禁するため、QOLが損なわれます。


乾性咳嗽の発生機序には少なくとも次の二つがあります。

一つは、気道壁表層に存在する咳受容体の感受性が亢進して咳嗽が発生する機序であり、アトピー咳嗽、胃食道逆流による咳嗽、アンジオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽が該当します。

もう一つは、気道壁深層に存在する気管支平滑筋の収縮によって、平滑筋の中あるいは周囲に存在する知覚神経終末が刺激されて咳嗽反応が惹起される機序であり、咳喘息と気管支喘息が該当します。

咳喘息では、気管支平滑筋収縮に対する知覚神経終末の反応性が亢進しており、平滑筋の弱い収縮によって咳嗽発作が惹起されます。


他方、気管支喘息では、この知覚神経終末の反応性は鈍化していますが、強い平滑筋収縮による過剰刺激によって咳嗽が惹起されます。

Ohkura N, et al. Bronchoconstriction-triggered cough is impaired in typical asthmatics J Asthma 47:51-54, 2010

 


(続く)咳喘息:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群3

 

【関連記事】  咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン

【リンク】
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 咳嗽ガイドライン