金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年01月14日

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と摘脾


特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
に対する摘脾のありかたについての論文を紹介させていただきます。

この論文は、必ず実際に論文を全てお読みいただくことをお願いしたいと思います。管理人は、大変に勉強させていただきました。

(参考)血友病後天性血友病PT-INRAPTT第VIII因子インヒビター



「成人ITP治療のrisk-benefitについて(脾摘)


著者名:高木省治郎、他。
雑誌名:臨床血液 52: 1751-1758, 2011.


<論文の要旨>

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者における脾摘は、血小板減少に対し有用な治療法ですが、長期的な臨床効果や合併症については必ずしも満足すべきものではありません。

一般的に脾摘による臨床効果は若年者において良好とされるため、特に、妊娠、出産の可能性のある若年の女性では脾摘が考慮される一方、高齢者では脾摘による副作用や若年者に比べその臨床効果が低いことから、他の治療が優先されるべきかもしれません。

しかし、脾摘の効果判定基準や年齢区分が報告によって異なりますので、脾摘の効果をより高く期待できる年齢を明確にすることはできません。

逆に、脾摘時期が若年であればある程、脾摘による長期の合併症の頻度も高くなる可能性があります。


残念ながら、現時点では脾摘のベネフィットとリスクを正確に評価することは極めて困難です。

今後、さらに血小板数に対する効果のみならず、血管性合併症や動脈硬化等を視点に入れた疫学研究や臨床的検討が日本でも必要であり、長期的な視点のもとで脾摘のベネフィットとリスクを評価することが重要と思われます。



【リンク】
 
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58| 出血性疾患