金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2012年03月12日

インヒビター保有血友病Aに対する免疫寛容療法(ITI):用量

高力価インヒビター保有血友病Aに対する免疫寛容療法(ITI)に際して、第VIII因子製剤は低用量が良いのか、高用量が良いのかを検討した報告です(参考:第VIII因子インヒビター)。

 結局は、高用量が良いということなのだと思います。

 

「免疫寛容療法の国際臨床試験の結果(無作為用量比較試験) 」

著者名:Hay CR, et al.
雑誌名:Blood 119: 1335-1344, 2012.


<論文の要旨>

高力価インヒビター保有血友病Aに対する免疫寛容療法(ITI)の国際臨床試験が行われました。

多施設前方視的、無作為用量比較試験であり、高用量群(HD:200IU/kg/dを毎日)と低用量群(LD:50IU/kgを1週間に3回)とに分類されました。


115症例中66例が規定のエンドポイントに到達しました。

成功例n=46(69.7%)、部分的な反応n=3(4.5%)、失敗n=17(25.8%)でした。

成功例はLD 24/58例、HD 22/57例と有意差はみられませんでした。


インヒビターの陰転、回収率の正常化までの期間は、HD群で有意に短かい結果でした(それぞれp=0.027、0.002)。

ITI中のインヒビター力価のピークと、治療に成功することは負相関を示しました。

LD群ではより頻回の出血がみられました(オッズ比2.2、P=0.0019)。


初期の月間出血回数はLD群0.62、HD群0.28であり(P=0.00024)、インヒビターが陰転化した後は90%低下しました。

出血のない症例は、LD群8/58例、HD群21/57例でした(P=0.0085)。

41症例で124回の中心静脈カテーテル感染が報告されましたが、頻度は両群間で差がありませんでした。


今回の臨床試験は、エビデンスに基づいたITI治療を行う上での貴重な成績となりました。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43| 出血性疾患