金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2012年07月01日

血友病Aに対する骨髄移植:第VIII因子活性回復の由来細胞は?

今回紹介させていただくBlood誌の論文は、移植治療に携わっている血液内科医にとっても、血栓止血診療に携わっている者にとっても興味のある論文ではないかと思います。

管理人も、大変に興味深く思いました。

 

「マウス血友病Aに対する骨髄移植の意義」

著者名:Follenzi A, et al.
雑誌名:Blood 119: 5532-5542, 2012.


<論文の要旨>

著者らは、血友病Aマウスに対して健常マウス骨髄を移植することにより、骨髄由来細胞が、第VIII因子を合成し遊離する細胞を産生するかどうか検討しました。

その結果、ドナー骨髄由来の肝細胞や血管内皮細胞はきわめて僅かでしたが、健常骨髄を投与された血友病マウスは血友病症状が消失することが明らかになりました(ドナー骨髄由来の肝細胞や血管内皮細胞はFVIII因子活性上昇を説明できませんでした)。

一方、ドナー骨髄由来の単核球や間葉系幹細胞は充分量に存在し、FVIII mRNAおよびFVIII蛋白を発現していました。


さらに、血友病Aマウスに対する健常マウスのクッパー細胞(肝マクロファージ/単核球)(主として骨髄由来)の投与、または骨髄由来間葉系幹細胞の投与は、血中の第VIII因子活性を上昇させ血友病症状を消失させました。


以上、骨髄移植により血友病Aが治る理由は、ドナー由来の単核球および間葉系幹細胞による(肝細胞や血管内皮細胞ではない)ものと考えられました。


<リンク>

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 出血性疾患