金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年01月19日

プロトロンビン時間(PT/INR)とは

プロトロンビン時間(PT)/PT-INR


【基準値】

通常10〜12秒位(試薬により異なります)
PT-INR:1.0

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン


【測定法】

クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、組織因子(tissue factor:TF)およびカルシウムイオンを添加して、凝固するまでの時間を計測します。

PTの値から、INR(international normalized ratio、国際標準比)は以下の式によって算出されます。

INR

ISI:PT試薬ごとにISI(International Sensitivity Index、国際感受性指標)が設定されています。

1.0に近い試薬が理想的とされています。


【検査の意義】

血液が凝固する機序としては、TFまたは異物(陰性荷電)による凝固の2種類が知られています(それぞれ、外因系&内因系凝固活性化機序)。

PTは、このうちTFによる凝固を反映した検査です。


PTは、凝固VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の活性低下で延長(INRは上昇)します。



【異常値となる疾患・病態】

PT延長(INR上昇)時に病的意義があります。以下が代表的疾患・病態です。

ワルファリン内服中、ビタミンK(VK)欠乏症、肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、凝固第VII・X・V・II・I因子の欠損症またはこれらの凝固因子に対するインヒビター、低栄養状態、リバーロキサバン内服時(APTTも軽度延長)など。


【異常値となる機序】
1)ワルファリン内服中:ワルファリンはVK拮抗薬でありVK 依存性凝固因子であるVII、IX、X、II因子がこの順番で低下します(半減期の短い順番)。特に、VII因子は最も半減期が短く最初に低下します(VK欠乏状態では、APTTよりもPTの方が先に延長します)。

2)VK欠乏症:同上。


3)肝不全、低栄養状態:凝固因子は肝臓で産生されるため、肝不全や低栄養状態ではPTやAPTTが延長します。特にPTは延長しやすいです。




【注意点】
採血量不十分の場合や多血症患者では、上清血漿中のクエン酸ナトリウム濃度が高くなり、artifactで凝固時間が延長します。


【検査プラン】

PT延長がみられた場合には、凝固VII、X、II、I因子のいずれか(複数凝固因子のこともある)の活性が低下していることを意味します。

ワルファリン内服中、VK欠乏症、肝疾患、低栄養状態のいずれでもない場合には、凝固第VII・X・V・II・I因子の欠損症である可能性がありますから、上記凝固因子を個々に測定します(先天性凝固因子異常症)。


【備考】

PT延長時、APTTが正常であれば第VII因子活性の低下が予想され(参考:第VII因子欠損症)、APTTも延長している場合には凝固第X・V・II・I因子のいずれか一つ以上の凝固因子活性低下が予想されます。



<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52| 凝固検査