金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年03月24日

健常人&血友病A患者における抗第VIII因子抗体

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

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健常人および血友病A患者における第VIII因子に対する抗体の差異

著者名:Whelan SFJ, et al.
雑誌名:Blood 121: 1039-1048, 2013.


<論文の要旨>

血友病A患者に対する補充療法の重大な合併症として第VIII因子(FVIII)に対する中和抗体の出現があげられます。

これらの抗体出現のより良い理解のために、中和抗体なのか非中和抗体なのか、アイソタイプ、IgGサブクラスなど広範囲にわたる検討が必要です。


著者らは第VIII因子結合抗体を検出する高感度ELISAを開発し、血友病A患者と健常人で測定しました。


その結果、健常人(n=600)では第VIII因子結合抗体は19%にみられました(2%の人では力価1:80以上)。

また、インヒビター非保有血友病A(n=77)では34%(5%の患者では力価1:80以上)、免疫寛容療法に成功した血友病Aでは39%(4%の症例では1:80以上)、インヒビター保有血友病A(n=20)では100%(全例で1:80以上)にみられました。


インヒビター保有血友病A患者での抗体はIgG4とIgG1が明らかに多いという結果でした。

興味あることに、第VIII因子非保有血友病Aや健常人ではIgG4は全くみられませんでした。


以上、第VIII因子に特異的なIgG4が第VIII因子インヒビターの発症に関与しているものと考えられました。




<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48| 出血性疾患