金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年06月27日

同種造血幹細胞移植後の肺胞出血とrFVIIa(ノボセブン)

論文紹介です。

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クロスミキシングテスト


「同種造血幹細胞移植後の肺胞出血に対するrFVIIa」

著者名: Elinoff JM, et al.
雑誌名:Biol Blood Marrow Transplant 20: 969-978, 2014.


<論文の要旨>

同種造血幹細胞移植後の肺胞出血(AH)の死亡率は60%を超えており、支持療法やステロイド大量療法が行われます。

著者らはAHに対して遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)を用いた場合の利点とリスクについて後方視的解析を行いました。


2005〜2012年の期間で、37症例においてAH57回が確認されました。

14回(14症例)はステロイドのみで治療され、43回(23症例)はステロイドとrFVIIaによる治療が行われました。

ステロイド使用量の中央値は1.9mg/kg/day(IQR0.8〜3.5mg/kg/day:メテルプレドニゾロン換算)であり、両群間に有意差はありませんでした。

rFVIIa投与量の中央値は41μg/kg(IQR:39〜62μg/kg)であり、投与回数の中央値は3回(IQR:2〜17回)でした。

感染症の合併は65%にみられました。

また72%の症例では人工呼吸器が必要となり、42%では生存し抜管可能となりました。


rFVIIaを投与しても、AHからの回復期間、人工呼吸器装着期間、酸素必要期間、院内死亡率に差はみられませんでした。

rFVIIa使用によって、4/43回(9%)で血栓症を併発しました。


以上、同種造血幹細胞移植後のAHにおいて、ステロイドにrFVIIaを併用しても利点はなく、臨床的要素(感染症の悪化、多臓器不全、原疾患の再燃)の方が重要と考えられました。


<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学

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金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50| 血栓性疾患