金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年10月07日

慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の深部静脈血栓症

論文紹介です。

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TPO受容体作動薬を使用し抗凝固療法への移行が可能であった下肢深部静脈血栓症合併慢性ITP急性増悪

著者名:河野宏樹、他
雑誌名:臨床血液 55: 697-702, 2014.

<論文の要旨>

症例は70歳と49歳の男性で、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の経過中の下肢深部静脈血栓症を合併し急性増悪による出血症状を呈しました。

いずれもステロイド抵抗性を示し、トロンボポエチン受容体作動薬(eltrombopag, romiplostim)を使用しました。

当初出血症状があり抗凝固療法は施行不能でしたが、血小板造血の回復が得られ、ワーファリンの内服を開始することができました。


近年、ITPの易血栓性病態としての側面が注目されつつありますが、血栓症を合併したITP急性増悪の報告はほとんどなく、またITPと血栓症の関連や病態は不明です。


著者らの2症例ではトロンボポエチン受容体作動薬投与後に幼若血小板数の増加が確認され血小板造血不全の病態が示唆されました。

トロンボポエチン受容体作動薬による血栓症の明らかな増悪は確認されませんでしたが、血栓症への影響は不明な点が多く、血栓症をモニタリングしながら抗凝固療法のタイミングを図る必要があると考えられました。



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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28| 出血性疾患