金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年10月08日

妊婦合併特発性血小板減少紫斑病(ITP)診療の参照ガイド

論文紹介です。

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「妊婦合併特発性血小板減少紫斑病(ITP)診療の参照ガイド」

著者名:宮川義隆、他
雑誌名:臨床血液 55: 934-947, 2014.

<論文の要旨>

妊娠初期から中期の出血症状がない妊婦においては、血小板数を3万/μl以上に保つことを目標とします。

治療を要する場合には、副腎皮質ステロイド療法(プレドニゾロン)あるいは免疫グロブリン大量療法を行うべきです。

ヘリコバクター・ピロリ除菌療法は除菌成功例の約半数に血小板増加反応が認められ安全に行える治療法ですが、妊娠時には薬剤が胎児に及ぼす影響を考慮する必要があります。

妊娠中のトロンボポエチン受容体作動薬は、治療上どうしても必要な場合を除き投与すべきではありません。

非妊娠時の治療において、トロンボポエチン受容体作動薬を使用中の女性患者については妊婦を希望する際には中止し、副腎皮質ステロイド療法などによって血小板数が安定した時点で妊婦を許可することが望ましいです。


妊娠中の脾臓摘出術は、流産の危険性が高く避けたほうがよいです。

分娩時期は原則的に自然経過を観察しますが、頸管成熟との兼ね合いで妊婦37週以降であれば分娩のタイミングを計ります。

分娩時の血小板数について安全といえる血小板数の閾値は明確でありませんが、経膣分娩であれば5万/μl以上、区域麻酔下による帝王切開であれば8万/μl以上が目安となります。

治療は副腎皮質ステロイド療法(プレドニゾロン)か、免疫グロブリン大量療法が推奨されます。


副腎皮質ステロイドあるいは免疫グロブリン大量療法を受ける患者の授乳が児に与える影響は少なく、通常は授乳制限を必要としません。


新生児の血小板数が5万/μl未満に減少する頻度は約10%、頭蓋内出血を合併する頻度は1%と推定されます。

分娩前に新生児の血小板数を予測する方法として、前子と次子の血小板数の相関が高いことが有用です。


新生児の血小板減少の治療は、出血症状のない場合、血小板数3万/μl未満であれば免疫グロブリン大量療法あるいは副腎皮質ステロイド薬の投与を考慮します。

出血症状がある場合、血小板数3万/μl未満であれば免疫グロブリン大量療法あるいは副腎皮質ステロイド薬の投与とともに、血小板数5万/μl以上を目標に血小板濃厚液の輸血を考慮します。


【注意】

診療にあたっては、必ず「妊婦合併特発性血小板減少紫斑病診療の参照ガイド」の全文を熟読すること。

「妊婦合併特発性血小板減少紫斑病(ITP)診療の参照ガイド」

著者名:宮川義隆、他
雑誌名:臨床血液 55: 934-947, 2014.


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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38| 出血性疾患