金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年12月24日

重症第XIII因子欠損症の臨床症状と治療

論文紹介です。

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「重症第XIII因子欠損症における臨床症状と治療」

著者名:Naderi M, et al. 
雑誌名:Int J Hematol 100: 443-449, 2014.

<論文の要旨>

先天性第XIII因子欠損症はまれな出血性素因ですが、東南イランでは発症頻度が高いことが知られています。

著者らは190症例を対象に検討を行っています。


イラン人に最多のFXIII-Aサブユニット遺伝子異常(Trp187Arg)は全例で解析されました。

臨床症状と、頭蓋内出血(ICH)、流産、第XIII因子欠損症の新生児の治療内容が記載されました。

新生児は2群に分類されました。
I群:標準量のフィブロガミンP(FP:10-26IU/kg)投与
II群:高用量投与(60-80IU/kg)、36ヶ月間

その結果、全症例がTrp187Arg(ホモ接合体)遺伝子異常でした。

臨床症状としては、臍帯出血、血腫、遷延する創部出血が高頻度にみられました。ICHも高頻度にみられ、行動発達異常や失語症をきたしていました。

ICHはFP10-26IU/kgで治療され、流産はFP10IU/kg(妊娠中は2週間毎;懐妊前は同量を予防的に4週間毎)で治療されました。

FP高用量が使用されたII群においては、血栓症の合併をきたすことなく、出血エピソードを減らしました。


イランでは、Trp187Argが最も高頻度にみられるFXIII-Aサブユニットの遺伝子異常であり、FPは有効な治療薬と考えられました。

また、FP高用量は、新生児において安全かつ有効と考えられました。


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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32| 出血性疾患