金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年01月03日

血友病Bと第IX因子遺伝子療法:長期的安全性と有効性

論文紹介です。

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「血友病Bに対する第IX因子遺伝子療法の長期的安全性と有効性」

著者名:Nathwani AC, et al. 
雑誌名:N Engl J Med 371: 1994-2004, 2014.

<論文の要旨>

重症血友病B患者において、新規のself-complementary AAV serotype8 (AAV8)ベクターを利用した遺伝子治療は、16ヶ月間まで第IX因子レベルを上昇させることが示されています。

著者らは、導入遺伝子の発現期間、ベクター量と反応の関係、持続性または遅発性毒性の程度について検討しました。


対象は重症血友病Bの10症例です。

ベクターを全10症例に1回静注したところ、用量依存性に第IX因子レベルは1〜6%まで上昇し、中央値3.2年以上持続しました(継続観察中)。


高容量群の全6症例において第IX因子レベルは5.1±1.7%(平均±SD)までの上昇が持続することが確認され、出血エピソードと予防的第IX因子製剤の使用量はどちらも90%以上減少しました。

高用量群6例中4例において7〜10週の間でALTが平均86IU/L(36〜202)まで上昇しましたが、プレドニゾロン投与により中央値5日(2〜35日)で正常化しました。

以上、重症血友病B10症例において、AAV8ベクターの1回静注は長期間にわたって第IX因子発現が持続し、臨床症状も改善するものと考えられました。

3年間の経過観察では遅発性の毒性もみられていません。

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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51| 出血性疾患