金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年05月31日

血小板輸注・血液凝固因子製剤輸注:CBT

CBT再現問題と解説です。

 

出血症状がないときに、予防的な血小板輸注または血液凝固因子製剤輸注の適応となるのはどれか。

A 血友病

B アミロイドーシス

C プロテインS欠乏症

D  血栓性血小板減少性紫斑病

E von Willebrand(フォン・ヴィレブランド)病


(解説)
A 血友病のなかでも重症例では、週に2〜3回の予防的な凝固因子製剤の輸注を行います(定期補充療法)。この予防的な輸注は、関節内出血の頻度を低下させて、血友病性関節症の進行を抑制するのに有効です。

B アミロイドーシスでは、アミロイド繊維に血液凝固第X因子が結合することで第X因子活性が低下することや、過度の線溶活性化が原因となって、出血症状を来すことがありますが、予防的な凝固因子製剤の輸注を行うことはありません。

C 先天性プロテインS欠乏症では、凝固阻止因子であるプロテインSが低下して血栓傾向をきたします。慢性期の治療はワルファリン内服が一般的です。

D 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では血管内皮障害と血小板活性化がみられます。血小板輸血は、TTPの病態を悪化させるために禁忌です。

E von Willebrand(フォン・ヴィレブランド)病(VWD)は、von Willebrand因子(VWF)が低下して出血傾向をきたす先天性疾患です。出血時にデスモプレシン(DDAVP)(血管内皮からVWFを遊離させる作用があります)の点滴や、VWFも含有された血漿由来第VIII因子製剤を輸注します。予防的な凝固因子製剤の輸注は一般的ではありません。


(参考)
血小板数が低下している症例に対して血小板輸血を行うことがありますが、漫然と血小板輸注を行うのではなく、臨床的な出血症状も評価しながら、計画的に投与します。

たとえば、特発性血小板減少性紫斑病性(ITP)では、血小板1〜3万/μL程度に低下していても、致命的な出血症状がなければ、血小板輸注を行うことはありません。

一方、血友病の重症例に対しては、血液凝固因子製剤の予防投与(定期補充療法)が血友病性関節症の抑制に有効であることが知られています。


(正解 )
 A


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19| 医師国家試験・専門医試験対策